† その優しさが苦しい †










「骸」


「久しぶりですね、姫」




レオくんが見えなくなって・・・

現れたのは六道骸。

・・・レオくんに憑依してた骸。




「ねぇ、ホントマジで止めようよーねぇ」




わかってる、わかってるけど・・・でも。




「今になって退くのは難しいのでスミマセン」


「いや、退けるから!まだ退いても何とかなりそうだから!」




何、言ってんだろ、私。

ちゃんと、決めたはずなのに。

少なくとも、10年後の・・・この世界の私は決めたはずなのに。




チャンってホント、潔くないよねぇー」


「そーですよ。潔くないですよ。てか、何回も言わせんな」


「だってあまりにも潔くないんだもんー。殺しちゃいたい」


「・・・じゃあ殺せば?」


「まさか。僕はチャンを殺したりしませーん」


「意味わかんなくなってきた」


チャンってホント面倒ごと運んでくるよねー」


「てか、そんなこと言うんだったら呼ばないでよ」


「えぇーでも、見たいかなぁーって思って」


「は?」


「僕が六道骸クンを殺しちゃうところ」


「何のプレイですか」




白蘭ってば10年前の私に・・・ツナくんを殺すところ見せたっぽいし。

今度は骸っていう話。

全く・・・趣味が悪い、悪すぎる。




「だってーほら、ねぇ?」


「だから意味わかんないって。今すぐ逃げていい?もちろん、骸を連れて」


「ダーメ」





「・・・こんな時に名前呼ぶなんてズルイ」




骸に姫呼びを強制させたのは私。

骸だけじゃない、犬や千種に対しても同じ。

だけど、彼らは優しくて・・・優しくて、私の我儘を叶えてくれた。




「えぇ、こんな時だからこそ・・・ね」


「骸」


「あぁーなんかムカつく」


「折角創ってる雰囲気を壊さないでもらえませんか?ドン・ミルフィオーレ」


「えぇーだってなんか僕、蚊帳の外って感じでムカつくんだもーん。ここ僕の部屋なのに」


「ほら、骸!今がチャンス逃げちゃおうよ!!」


「・・・姫」


「どうしてもダメ?」


「はい」


「・・・そっか・・・・・・潔くなくてごめんね」


「知ってますよ、姫が潔くないことくらい」


「そーだね。・・・骸」


「姫、動かないでくださいね」


「でも、私はやっぱり・・・!」




本体じゃなくても、骸を失いたくない。

失いたくない、失いたくないよ・・・!

でも、だったら・・・私が今すぐ白蘭を殺すしか道はない。




「てかさーチャンも骸クンもマジで僕のこと無視してるよねー」


「そりゃ、あなたとの殺し合いよりも姫との会話のほうが僕にとっては大切ですから」


「骸ってばずるいずるい!ちょっとキュンってしちゃったじゃん!」




まぁ、天秤にかけられたのが白蘭との殺し合いと私との会話っていうのが色んな意味でおかしいけど。

よし、でも・・・わずかな隙があるはず。

今なら殺せなくても・・・

白蘭に傷をつけることくらいなら出来るかもしれない。




「あ、チャンに僕は殺せないよー」


「・・・そんなのやってみないとわからないでしょ」


「んーん。わかるよー。だって、君は何度も僕に牙を向けてきたし」


「・・・パラレルワールド・・・」


「うわぁーチャンよくそんなこと知ってるねー」


「私の情報網なめんな」




この情報は正チャンからなんだけど。

この世界の私が、この世界の正チャンから知り得た情報。

知らなかったら、薔薇姫の瞳の能力使って調べることもなかっただろうし。

まさか、そんな人間がいるなんて思ってもいなかったし。




「あーそっかー忘れてたけど、チャンって情報屋サンだったよねー」


「パラレルワールドで私は白蘭のこと殺そうとしたわけ?」


「うん」


「で、いつもあなたに殺されてたってこと?」


「まぁ、そんな感じかなー」




そうだよね。

多分、白蘭にとって私を殺すなんてこと・・・

そんなのその辺に咲いてる花を踏み潰すのと何も変わらないんだ。




「だから、チャンは今は眠っててねー」


「なっ」




一瞬。

ほんの一瞬。

その一瞬で、私は・・・意識を失わされた。

白い悪魔に。




















◇◇◇





















「ドン・ミルフィオーレが姫に御執心だという噂はあながち間違いではなかったようですね」


「あははー」


「全く・・・あの姫はあなたのような厄介な者を惹きつける」


「骸クンに言われたくないなぁー君も十分厄介でしょ」










† その優しさが苦しい †

(えぇ、だからこそ・・・守りたくなる存在なんですよ、姫は。)



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