† 仕方ないじゃん、好きなんだから †
「白蘭サン失礼します。渡し損ねた書類が・・・」
「・・・あれ?どこかで見たことある」
「えぇ?!サン、もう入れ替わったんですか?!」
おかしい、おかしい。
サンが入れ替わるのはもう少し後だったはずだ。
具体的には綱吉クンたちがメローネ基地に侵入してくるころくらいの予定だったはず。
・・・あぁ、お腹痛くなってきた・・・
「あ、思い出した。入江正一クンだ」
「あぁーもう、白蘭サンってばまた勝手なことして!!!」
そうだ。
あの人が何かしたんだ。
白蘭サンが10年バズーカ持ってても納得はいく。
パラレルワールドを渡れる・・・人間。
「チャンただいまー。あ、正チャン来てたんだー」
「白蘭サン!!サンが入れ替わるのはもう少し後でしたよね?!」
「うん。でも、なんかもういいかなぁーって思ってやっちゃった」
「・・・まぁ、サンもボンゴレリング持ってるからいいですけど」
「そうそう!チャンに隊服のプレゼントでーす」
「・・・二人が着てるのと全然違うみたいだけど」
「そりゃ可愛いチャンには可愛い隊服でしょ」
「意味わかんないから」
「いーの。とりあえず着替えて着替えて!あ、手伝ってあげよーか?」
「結構です!!」
「残念ー。あ、奥の部屋使っていーよ、チャンの部屋にしてあげるから」
◇◇◇
「白蘭サン」
「んー?」
「なんで、サンをこんなに早く入れ替わらせたんですか?」
この人のことだ、きっと何かを考えているはずだ。
「んー僕がチャンのこと好きになりすぎちゃったから」
「・・・え?」
軽く、本当に軽く白蘭サンはそんなことを言った。
白蘭サンがサンに惚れこんでいたのは知っている。
だけど、それは・・・本当なのか嘘なのかもわからなかった。
ただの興味がある存在なだけ・・・僕としてはそう思っていた。
「なんか本当に好きになっちゃったっぽいんだよねーチャンのこと」
自分でもびっくり、なんて言って白蘭サンは笑った。
「だから、入れ替わらせたと?」
「うん、そーいうこと。別に急ぐ必要もないかなぁーとも思ったんだけどね。気づいたらやっちゃってたんだー」
「はぁ・・・」
「ごめんねー正チャン」
「まぁ白蘭サンが決めたことなら別にいいですけど。でも、何も知らないサンをミルフィオーレに入れるつもりですか?」
「うん。何も知らないって言っても・・・きっと全部もう知ってるよ」
「え?」
「チャンの瞳は特別」
「・・・あぁ、薔薇姫の瞳ですか?」
「そうそう!よく知ってたね、正チャン!」
「そりゃ知ってますよ。薔薇姫の瞳はマフィア界の恐怖でもありますからね」
「そう、その恐怖の瞳を持ってるチャン。それは10年前のチャンも変わらないからねー」
なるほど。
確かにそうだ。
薔薇姫の瞳を持ってすれば・・・今のこの状況を知らないはずもない。
でも、それだったら余計に・・・ミルフィオーレに入隊しようなんて思うはずもない。
10年後のサンならまだしも、何も知らない10年前のサンは・・・ここにいるはずがない。
「サンに聞いたんですか?」
「んー?何を?」
「本当にミルフィオーレに入隊する気があるのか」
「聞いてないよー」
「じゃあ、嫌なんじゃないですか?仮にも・・・10年前のサンの所属はキャバッローネですよね?」
「ううん、多分大丈夫だよ」
「え?」
「チャンはきっとここにいると思うよ。だって、チャンはトロイの木馬だから」
「つまり、ミルフィオーレ内に自ら入り、ボンゴレを勝利させると?」
「そーいうこと」
「そこまでわかってて白蘭サンはどうしてサンをミルフィオーレに?」
「んー面白そうだから」
「え?」
「ボンゴレファミリーが恋焦がれるチャンがミルフィオーレにいるとなったらどうなるかなぁーって」
「・・・・・・」
「なーんて言ってみたけど、本当のところは僕がただチャンのこと欲しかっただけ」
「・・・10年後のサンは白蘭サンのものになってたんじゃないんですか?」
「んーん、違うよ。10年後のチャンもトロイの木馬、そのためにうちに来たんだし」
「・・・え?」
「まぁ正チャンに言ったらしい、ドン・ボンゴレが死んだからっていうのも本当だろうけど」
・・・・・・やっぱり気づいてたんですね、白蘭サン。
サンがトロイの木馬としてミルフィオーレに来たことを・・・
じゃあ、もしかして・・・僕たちが考えていることも・・・?
・・・考えても仕方がない。
今は前に進むしかないんだ。
願うことは唯一つ、彼らが早急に成長すること。
「・・・白蘭サンって本当にサンのことが好きなんですね」
「うん、大好き」
† 仕方ないじゃん、好きなんだから †
(・・・サンは白蘭さんのことをどう思っているのだろうか。)
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