† 君に聞こえない声でごめんと呟く †
「はぁ・・・」
「最近ため息ばっかだな。ボス」
「なんかさー・・・物足りねぇーんだよ」
「ははっ欲求不満か?」
「うるせぇ!」
「そういや、ボス・・・今日、デートじゃなかったか?」
「へ?・・・うわっ忘れてた!!ロマーリオ、今何時だ?!」
「ちょうど12時だな」
「やべ!ロマーリオ、車頼む!!」
「待ち合わせ何時なんだ?ボス」
「・・・12時」
ポケットに突っ込んであった携帯を取り出して電話をかける。
恐らく、待ち合わせ場所に来ているだろう恋人に。
「もしもし!俺だけど!悪い!今から行くからもうちょっと待っててくれっか?!」
焦って言えば簡単に出る了承の声。
・・・ふと、考えてしまった。
アイツだったら、絶対キレんだろうなぁーって。
でも、なんだかんだいって待っててくれそう。
「ボス!車の準備できたぜ」
「サンキュ!」
あぁーなんでアイツのこと考えてんだよ!
アイツは妹みたいな奴。
この感情は恋愛じゃない。
でも、・・・逢いたい・・・なんてな。
◇◇◇
「ディーノ様」
「え、あ、どーした?」
「こちらとこちら、どちらがいいと思います?」
「そうだなぁー・・・・・・俺は、あっちのほうが好き」
彼女が持っているのとは違う服。
ショーウィンドウに飾られてる、ちょっと甘めなデザインのワンピ。
「少し子どもっぽくありません?」
「そーか?」
「・・・・・・」
確かに、彼女が持つ服は綺麗めなデザイン。
俺が指したのはどっちかといえば、可愛い系。
・・・・・・アイツに似合いそうだよなー・・・
サイズが合うかが問題だろうけど。
ははっそんなこと言ったら間違いなく殴られる。
「ディーノ様」
「ん?」
「・・・出ましょう」
「あぁ、いいのか?服」
「えぇ」
「そっか。じゃあ、どこ行く?」
「近くの公園に」
「公園?珍しいな」
「・・・えぇ」
◇◇◇
「でも、いきなり公園だなんてどうしたんだ?」
「ディーノ様にお聞きしたいことがあります」
「ん?」
「・・・私のこと、どうお思いですか?」
「へ?」
「私のこと、本当に愛してくださっているのですか・・・?」
好きか、と聞かれれば、好きだ、と答える。
じゃあ、愛してるか、と聞かれれば・・・俺はなんて答える?
「それは・・・」
「私にはあなたの愛がわかりません」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・ごめん」
そう、謝れば頬に鋭い痛み。
好きか、と聞かれれば、好きだ、と答える。
愛してるか、と聞かれれば・・・ごめんとしか言えなかった。
「さようなら、ディーノ様」
それは、彼女からの別れの言葉。
「・・・ごめん、な」
涙を流す彼女に、俺はごめんとしか言えない。
足早に立ち去る彼女を、追いかけることもできない。
・・・・・・いや、追いかけようと俺の足はしていない。
「ははっ何やってんだろーな、俺」
自嘲気味に呟いて、俺は傍にあったベンチに腰を下ろした。
† 君に聞こえない声でごめんと呟く †
(ごめんな・・・今まで俺の見栄で付き合ったりして、本当にごめん)
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