† 足りない足りない、愛が足りない †










「ディーノ様。聞いてますの?!」


「え、あー悪い。聞いてなかった」


「先ほどの女性は誰なんですの?!」


って言って・・・友達」




とりあえず、友達だよな?

・・・いや、違うような気がしてきた。

妹みたいな奴?

あー友達よりはそんな感じか。




「訂正。妹みたいな奴」


「・・・・・・」




妹とか言ったらアイツ怒りそうだよなー。

同じ歳のくせにって。

ははっ想像できる。




「・・・・・・」


「・・・ん?黙り込んでどうした?」


「・・・・・・あの女性とはとても楽しそうに笑いますのね」


「まぁ見てて飽きないしなー」




なんか、見てて面白いし。

ついつい頭とか撫でたくなっちまう。

髪をぐちゃぐちゃにしたら睨んでくるけど。




「・・・ディーノ様」


「何だ?」


「あの女性ともうお逢いにならないでください」


「は?」


「そうでなければ、私と別れてください」


「ちょ、ちょっと待て!なんでそうなるんだよ?!」


「私よりもあの女性と一緒にいるほうが楽しそうですもの」


「楽しいちゃ楽しいけど!別に、アイツと恋愛とか考えたことないし」




そうだ。

恋愛じゃない。




「・・・・・・」


「・・・わかった。もう逢わないから」


「ディーノ様」


「それでいいんだろ?」


「・・・ごめんなさい、ディーノ様」


「いや、いいって。まぁ、もし偶然逢っちまったりしたらその時は許してくれよな?」


「・・・えぇ」




別に逢わなくたってどうにでもなる。

まず、連絡先も知らねぇーし。

この前マンションまで送ってやったけど、俺が道を覚えてるわけでもねぇーし。

もし、これからもさっきみたいに偶然に逢ったりしたら話しかけるかもしんねぇけど。

別にアイツと何か特別な繋がりとか関わりがあるわけでもねぇーし。




「・・・ディーノ様」




それは、キスを求める声色。

俺はその声色に応える。

しかし、目の前の恋人に口付けても、何かが足りない。




「・・・悪ぃ、今日は帰るわ」


「ディーノ様?!」


「また買い物付き合うから。今日はごめん、な?」




不満そうな彼女。

まぁそうだよな。

まだ、買い物も中途半端で時間も昼を過ぎたくらい。

デートを切り上げるには早すぎる。




「ロマーリオ。彼女を送って行ってやってくれ」


「わかったよ、ボス」


「じゃあな、気をつけて帰れよー」


「ディーノ様・・・!」




俺の名を呼ぶ恋人に背を向けて歩き出す。

何が、足りない。

見栄で付き合ってるって言うのも確かだけど、別に今の恋人に恋愛感情がないわけではない。

好きか、と聞かれたら、好きだ、と答える。

だけど、何かが足りない。




「あーわけわかんねぇー」




なんなんだろうな、このもやもやとした気持ち。

誰か、教えてくれ・・・なんて、な。




「何が?」


「うわぁ?!」


「なんでそんなびっくりするかな。てか、恋人サンは?」


「・・・なんでいるんだよ」


「いや、別にどこにいようと関係ないでしょ。買い物しに来たんだし」


「・・・・・・」




はは・・・いきなり約束破ることになるとは、な。

つい、数分前に逢わないとか言ったのにな・・・まぁ、これは偶然に逢ったんだし仕方ない。




「ねぇ、恋人サンは?」


「帰った。っていうか、帰らした」


「は?デート終了にはまだ早くない?」


「なんか気分が乗らなくてな」


「気分、ねぇ?そういうのムカつく」


「なんでお前にムカつかれなきゃいけねぇーんだよ」


「いや、一般論?いきなり気分が乗らないからとか言われたらムカつくでしょ。逆に考えてみなよ」


「・・・・・・確かに、ムカつくかも」


「でしょ。ちゃんと謝りなよー」


「・・・あぁ、そうだな」


「じゃあ、私行くから」


「・・・


「ん?」


「ありがとな」


「どーいたしまして」


「人ごみに埋もれんなよーお前、ちっせぇーし」


「殴ってやりましょーか?」


「それは勘弁」




さっきまでもやもやしてた気持ちが、いつの間にか消えてた。

まるで、何か、足りないものが埋まったかのように。










† 足りない足りない、愛が足りない †

(・・・妹、みたいな奴だよな?・・・・・・本当に、それだけか?)



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