† 心の弱さは誰にでもあるもんだ †
「なぁ・・・お前さーもうちょい可愛いこと言えねぇーの?」
「・・・・・・こういう性格なんでできませーん」
「・・・・・・嘘つき」
「は?」
「っていうか、むしろ・・・強がりか」
「・・・・・・」
「別に怖がらせるつもりはないんだぜ、俺も」
「顔、近い・・・っ」
「痛ってぇー・・・!お前なぁ!」
「だって、アンタが顔、そんな近づけるから・・・!」
・・・なんだ、可愛い顔できんじゃねぇーか。
「あぁ!頭わしゃわしゃすんなー!髪、ぐちゃぐちゃになる!!」
「大丈夫だって。もうぐちゃぐちゃだし」
「アンタねぇ・・・!」
「ははっごめんごめん。悪かった。ほら、髪梳いてやっから」
「え?」
「ぐちゃぐちゃ嫌なんだろ?」
「え、あ・・・うん」
「結構柔らかいな、髪」
「一応、頑張ってるから。トリートメントとか」
「そっか」
そういうとこは歳相応なんだなー。
まぁ、外見以外は十分歳相応な行動してるように見えるけど。
さっきも、ちゃんと「いただきます」と「ご馳走様」言ってたし。
ちゃんと、手も合わせて。
しかも、結構上品な食べ方してたし。
「ほら、できた」
「・・・ありがと」
「お前さー笑ってたら可愛い」
「なっ」
「あんま気ぃ張りすぎんなよー自滅しそうだし」
「・・・・・・」
「なんか、頑張りすぎてる感じするからさ」
一応、マフィアのボスやってて人を見る目はあると思ってる。
俺の目に映るコイツはなんか・・・造りモノ。
仮面を被って、本物を出さないようにしてる感じ。
「アンタなんかに言われたくない・・・!」
「ははっ確かにな。初対面の男に言われてもなぁ?」
「・・・怒った・・・?」
「いや、全然?」
「ヤダ、怒んないで・・・ごめんなさい」
「大丈夫だって、怒ってねぇーから」
「・・・ホント?」
「あぁ、ホント」
「・・・・・・よかった・・・」
「・・・なるほどな」
「え?」
「お前、人一倍人に嫌われるのが怖いタイプだろ?」
「・・・・・・」
「だから、出来る限り多少無理しても嫌われることのないように頑張って、気ぃ張ってるってわけだ」
「・・・・・・」
自分の中に色々溜め込んで、自滅しちまうタイプ。
しかも、なんだかんだで不器用っぽいし。
うまく物事を運べずに空回りしてそう。
「あぁーごめん。泣かせちまったか・・・」
「・・・・・・っ・・・っ」
「泣いていいぜ。どうせ、誰も見てねぇーし」
「・・・ヤダ」
「お前なぁー」
「泣かない。絶対泣かない・・・泣いたら全部、飛び出ちゃうし」
「・・・・・・」
・・・強がり、か。
しかも、重度の。
「・・・あ、そのマンション。停まって」
「え?」
「このマンション。私の家」
「あ、そっか・・・・・・」
「送ってくれてありがとね。運転手さんもありがとうございました」
「・・・っ!」
「何?」
「・・・・・・いや、なんでもない。色々悪かったな」
「別に。お寿司ご馳走様でした」
「気に入ったんならまた一緒に行こうぜ、寿司」
「社交辞令は信じない主義なの」
「社交辞令じゃねぇーって!」
「あはっじゃあまた逢うことがあったらねー」
そう言って、はマンションのエントランスに消えていった。
振り返ることもなく。
◇◇◇
「あぁー・・・疲れた」
何よ、あの男・・・
初対面のくせに人の痛いとこザクザクと突いてきて・・・
ムカつく。
† 心の弱さは誰にでもあるもんだ †
(ムカつく・・・けど、なんか、嫌いにはなれない・・・そんな感じ)
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