† 割れた心のカケラを探して、でも見つからなくて †
「はぁ・・・」
迷子とかありえないし。
イタリア来てもう、だいぶ経つのに!!
しかも、必要なときに白蘭が用意した見張りはいないし!!
何のための見張りですか!
仕事しろー!
あとで白蘭に言いつけてやるー!!!
「あーあ、このままじゃのたれ死ぬよー」
残念ながらタクシーに乗るなんて芸当出来ないし。
てか、まずイタリア語が無理。
簡単なイタリア語は読めるから買い物は出来るけど喋れないし。
「・・・こんなことならイタリア語真面目に勉強するんだった」
しかも、どんどん辺鄙なところ歩いてる気がするし。
もう、最悪ー。
なんか、柄が悪い地域っぽいし。
イヤだなぁーなんか変な人に絡まれたら。
「よぉよぉ、嬢ちゃん。可愛いじゃねぇーか」
「下手なイタリア語はさっぱりわかんないから」
とりあえず、日本語で返そう。
だって、私、日本語しか喋れないもんね!!
「テメェ・・!!」
うわぁーなんか、キレられてる。
日本語通じちゃったかなぁー。
あーあ、殴られるのかなぁーイヤだなぁー。
「!!!」
「・・・え?」
「何やってんだ!!!」
「・・・・・・ディーノ」
「綺麗な兄ちゃんは黙ってな!こっちはこの嬢ちゃんに用があるんだ!!」
「いや、それは出来ない」
「は?」
「コイツは俺の女だ」
イタリア語さっぱりです。
ディーノの綺麗なイタリア語でもわかりません。
ごめんなさい、さっぱりです。。
「ディーノなんて言ったの?」
「・・・コイツは俺の女だ」
「なっ違うでしょ!!」
「いいから!今はそういうのが一番いいんだって!!」
「・・・・・・」
「はっ痛い目に遭いたくなかったら女と金を置いていきな、綺麗な兄ちゃん」
「やっやだ!離して!!!」
つかまれた私の腕。
でも、その瞬間に鞭が男の身体に巻きつく。
その瞬間、私を掴んでた手は離される。
「言っただろ。コイツは俺の女だって」
「は、離せ!!」
「二度とこいつに近づかないって約束するなら離す」
「わかった!近づかない!!」
・・・多分、相手の男は降参お手上げ状態。
そりゃそうだよね。
だって、ディーノ相手だもん。
全然レベルが違う。
「ディーノ、もういいんじゃない?」
「・・・あぁ、そうだな」
そう言って、ディーノは男に絡み付けた鞭を解いた。
その瞬間・・・
バンッ。
響く銃声。
私の後ろから。
音が響いたと同時に倒れるのは目の前の男。
撃ったのは白い悪魔。
「詰めが甘いなぁーディーノくんは」
「白蘭っ」
「・・・無意味に殺す必要はないだろ」
「理由はあるよ」
「は?」
「だって・・・チャンに触れたから。ね?立派な理由でしょ」
「・・・お前、独占欲強すぎ」
「えぇーそんなことないよ」
「どうだかな」
「だって、僕が独占欲強いんだったらディーノくんのことも殺してるもーん。てか、一番に殺したい相手でしょ」
「あー」
「とりあえず、ディーノくんは殺さない予定だよー」
「は?」
「だって、ディーノくんが死んだらチャン死んじゃうし」
「え?」
「一応、まだチャンのこと死なせるつもりもないしねー」
「・・・ホント、お前の考えてることがわかんねぇ・・・」
「あははっじゃあ、わかんないついでにお茶でもしちゃう?」
「は?」
「この辺だと僕のお勧めはクレープ屋なんだけど」
「・・・どこに今、こう着状態の敵のボスとクレープ食べてるボスがいるんだよ」
「えぇーボスが余裕持ってないとついてくる部下が大変だよー」
「・・・・・・」
「ほらほらっチャンも行くよー」
「わっ白蘭っ」
「うわっ」
「あ、ごめんっ」
私は思わずディーノの手を掴んでしまった。
白蘭に掴まれて咄嗟のことだったとしてもコレはダメだ・・・
あー何やってんのよ、自分ー!!!
「いや、・・・仕方ないか」
「え?」
「今日だけ、な」
「・・・・・・うん」
周りでは大変なことになってるのに・・・
自分だけ、こんな幸せ空間にいるなんて、ね。
絶対、罰が当たるような気がする。
「チャンは今はまだ優柔不断でいなよねー」
「へ?」
「それがチャンの長生きの秘訣ですー」
「意味わかんないんだけど」
それに、優柔不断っていうのはこの状態のこと言ってるのかな・・・
私は、白蘭のこと選んだって言ったのに。
それはスルーですか?!
「実はねーチャンは僕のこと選んじゃダメなんだよー」
「は?」
「ダメなんだよ、僕のこと選んだら」
そう言って、白蘭は笑った。
その笑顔は・・・少しだけ、ほんの少しだけ・・・悲しそうな気がした。
「・・・何よ、それ」
「だからチャンはまだ優柔不断でふらふらしてるべきなんでーす」
「だから意味わかんないって」
「わかんなくてもいーよ」
† 割れた心のカケラを探して、でも見つからなくて †
(これじゃいけないってわかってる、けど・・・私はこの幸せを求めてしまう。)
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