† ごめんね、優しい言葉も言えなくて †










「ただいま」


「え?」


「何その呆けた顔」


「なんでチャンがここにいるの?」




今日、ディーノくんに逢いに行ってたよね。

それで・・・ディーノくんは間違いなく、チャンを僕から離すことを考えてたはず。

だって、キャバッローネにとってミルフィオーレは敵と認識。

僕が、ドン・ボンゴレを殺したから。




「私、ミルフィオーレファミリーのはずなんだけど」


「・・・・・・」


「・・・・・・」




ミルフィオーレファミリーだと言うチャンに目には涙が溜まってた。

強がって、我慢して。

本当は泣きたいのに、僕の前だから泣けなくて・・・無理やり笑って。

本当に、可哀想な子だね。




「・・・・・・ごめんね」


「何が?」


チャンにそんな顔させちゃって」


「私、笑ってるでしょ」


「・・・うん、でも・・・泣いてる」


「人をね、撃つのって、本当に難しいね」


「・・・・・・チャン?」


「ごめんね。私、ディーノのこと殺せなかった」


「・・・ごめん、ごめん・・・ごめんね、チャン」




君に、そんな顔させるつもりはなかったんだよ。

本当に。

できれば・・・こんな世界なんて知らずにいさせてあげたかった。

・・・こんなこと、僕が思うなんてね。




「私ね、殺せるって思ってたの。ディーノのこと」


「・・・チャンが殺せるわけないでしょ」




銃を持ったこともない子なのに。

それに、相手はディーノくん。

・・・チャンに殺せるはずがない。




「でも、殺せなかった・・・っ殺さなきゃ、いけなかったのに・・・!」


「銃は、チャンには似合わないね・・・だから没収」


「嫌。それは・・・私が持ってたいの」


チャン?」


「その銃は私が選んだ証だから」


「・・・チャンは何を選んだの?」


「私は・・・・・・愛してはくれない人を選んだの」


「え?」


「愛してくれる人を選ぶほうが幸せになれるってわかってるのに、ね」




愛してくれる人=ディーノくん。

愛してはくれない人=・・・僕ってことかな。

確かに、そうかもしれない。

僕は・・・誰かを愛したことなんてないから。

だから、チャンのこと、愛せるなんて思えない。

でも・・・




チャン」


「なぁに?」


「僕、チャンのことなかなか飽きそうにないや」


「そっか。それなら・・・私も選んだ甲斐があったね」




愛してる。

なんて、そんな簡単な言葉紡げない。

しいて紡ぐなら・・・




チャン」


「ん?」


「僕はね、君のこと・・・なんだかすごく愛おしいみたい」










† ごめんね、優しい言葉も言えなくて †

(好きなんかよりも、もっと特別。)



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