† 怖いけれど立ち向かわなければ、永遠に怖いままだから †
「あ、正チャンー。正チャンの続きの部屋って使ってたっけー?」
「今は使ってませんけど」
「ちょっとチャン置いてあげてくれないー?」
「は?」
「チャンが一般人ってこと忘れててさー」
「白蘭サン、話が見えないんですけど」
「チャンには可哀想なことしちゃった」
サンの服には血。
その血は恐らく、サンでも白蘭サンのものでもない。
「・・・大丈夫ですか?白蘭サン」
「んー僕は平気だよー全然」
「・・・そうですか」
「正チャンにチャンのこと任せるけど苛めないであげてねー」
「どちらかというと僕が苛められそうなんですけど」
「あははー確かにチャンのほうが強いもんねー」
「本当にそうですよ。ことあるごとに僕のこと睨みつけてきますし」
「まぁとりあえず、チャンのことよろしくねー」
「はい、わかりました」
・・・なんか意外だな。
白蘭サンがサンのこと考えた行動をとってることが。
この人は何かに執着するイメージがないに等しい。
執着してるのはマシュマロだけだと思ってた。
「白蘭サン」
「んー?」
「サンのこと、どう思ってるんですか?」
「それがわかんないんだよねー」
「え?」
「僕さー面倒な子は嫌いだし、無駄な強がりもムカつくんだけど」
「はぁ」
白蘭サンが言う面倒な子=サン。
無駄な強がり=サン。
・・・てか、今この状況ではサンしか指してないんだと思う。
「でも、チャンだけはなんか別みたいなんだよね」
「特別ってことですか?」
「特別っていうのも嫌いなんだけどねー。そういうのって壊したくなるじゃん」
「白蘭サンって執着とかしないですよね」
「うん、しないねー。基本的に飽きたらすぐにポイってしちゃうし」
「でも、サンのこととなると途端に人間らしくなりますよね、白蘭サン」
「僕、人間様だからねー。てか、僕そんなにチャンのことになると人間らしい?」
「はい。少なくとも僕にはそう見えます」
「そっかー」
「とりあえず、サンのことはわかりました。」
「うん、お願いねー。チャンってホント面倒な子だから」
「あはは・・・それ、サンに言ったら返されますよ、絶対」
◇◇◇
「・・・ぅ・・・んっ」
「あ、起きましたか?」
「・・・なんで正チャンがいるわけ?」
「一応、ここ僕の部屋なんで」
「いや、私の・・・あ、ホントだ。私の知らない部屋」
私の部屋はロココ調。
無駄にアンティーク調です。
でも、この部屋は全くそんな感じの家具一つない・・・そう、正チャンの部屋って感じ。
「僕の続きの部屋なんですよ、ここ」
「ふーん・・・なんか白蘭の部屋より狭いね」
「ボス様と一緒にしないでください」
「ですよねー。で、私は何でここにいるわけ?」
「白蘭サンがサンをここに置いて欲しいって言ってきたんですよ」
「は?なんで?」
「詳しくは聞いてないんですけど、サンが一般人だからだそうです」
「・・・あの馬鹿・・・」
わかった。
なんで白蘭が私を正チャンに任せたのか。
きっと・・・私があの手を振り払ったから。
「ムカつく」
「は?」
「何よりも自分自身にムカつく」
甘やかされてた。
きっと、これからも甘やかされる。
だって、白蘭は絶対には私に銃を握らせないから。
でも、だからこそ・・・これだけは越えなきゃいけないんだ。
あの二人と一緒にいたいと願う以上。
甘えてちゃダメなこともある。
綺麗なところばかりを見ていても、ダメなんだよね。
「正チャン、私ちょっと戦ってくる」
「は?」
「ムカつくし」
「いや、サン?」
「ムカつくもんはムカつく。戦って戦って勝ってやる」
「・・・はぁ、本当に厄介ですね」
「よく言われる」
「もう勝手にしてください。・・・でも、負けそうになったら帰って来ていいですよ」
「正チャンが珍しく優しいー」
「いや、サンがいつも僕のこと邪険にしてるだけだと思うんですけど」
「だって正チャンって敵なんだもん」
色んな意味で。
ホントに色んな意味で。
・・・もっとも、私が白蘭の味方とも限らないんだけどね。
「・・・サン?」
「とりあえず、正チャン。私、負ける戦いはしないって決めてるから」
「・・・白蘭サンに勝てそうですか?」
「正直に言っていい?」
「はい」
「むちゃくちゃ負けそうな気配ですよ」
「ですよね」
「でも、・・・負けるわけにはいかないから」
「・・・本当に好きなんですね、白蘭サンのこと」
「それはわかりませーん。好きになったら苦労とかしちゃうのわかってるし」
「それは今もでしょう?」
「まぁね」
「じゃあ、とりあえず頑張ってきてください」
「ありがと、正チャン。私、正チャンのこと嫌いじゃないよ・・・・・・敵だけどね!」
† 怖いけれど立ち向かわなければ、永遠に怖いままだから †
(そう、正チャンのことは嫌いじゃないんだよ。例え、白蘭を裏切ってるとしてもね。)
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