† 冷たくなった、猫 †
「、風呂入って来い。な?」
「いい」
「いい、じゃなくて。な?風邪引いちまうだろ?」
「別にいい」
「よくない」
少し、低い声で言えばビクッと身体が震える。
はずっと、俯いたまま。
視線を合わせようと屈んでみても、顔をそらす。
「・・・・・・強制連行。暴れんなよ」
痺れを切らした俺は強引にを抱き上げる。
そうすれば小さく声が上がる。
「ディーノ」
「黙ってろ」
「・・・・・・」
「ドン・ジェッソ。暖房つけてくれ、さすがに俺らも風邪引いちまう」
ドン・ジェッソは何も言わずに空調に手を伸ばす。
ったく・・・なんて空気放ってんだよ。
◇◇◇
「とりあえず、ちゃんと温まれよ。話はそれからだ」
「・・・・・・」
浴室にを降ろして、頭を撫でながらそう言ってやる。
でも、は動こうとしない。
ただ、俺をじっと見てる。
さっきは全然目を合わせようともしなかったくせに。
「何?脱がして欲しいのか?」
「ち、違うもん・・・!」
「わかってるって」
頭をわしゃわしゃとして撫でてやれば、睨みつけられる。
真っ赤な顔してっから全然怖くもないけど。
てか、いつものだよな?
「とにかく、ちゃんと温まれよ!」
◇◇◇
「はぁ・・・」
お湯を溜めながら湯船につかる。
お湯、あったかいなぁ・・・
「うぅー・・・痛い」
しみる傷口。
さっき、作った傷。
「自業自得自業自得・・・はぁ」
なんか、さっきからため息ばっかり。
うん、わかってる。
こんなことしても、仕方ないって。
単なる気休め。
自分に甘い証拠。
「・・・・・・あ、ブレスレット、どこやったんだろ」
外したことは覚えてる。
でも、湧き上がってくる感情を抑えることに必死で、どこにやったか覚えてない。
「・・・あは、ダメだなぁーホントに」
こんな傷つけても、意味ないのに。
傷を見るたびに嫌な気持ちになる。
それなのに、また、傷は深くなってしまった。
「早く消えればいいのに」
多分、何もしなかったら普通に治ると思う。
自分の爪で傷つけるのはいくら思いっきりやっても、刃物でつけたものとは全然違うと思う。
そんな度胸ないし。
私にできるのはせいぜいこれくらい。
「お湯、あったかいなぁ・・・」
◇◇◇
「・・・チャンは?」
「おとなしく風呂入った」
「・・・そう」
ディーノくんの言うことならちゃんと聞くんだね。
僕の言うことなんて全く聞かないくせに。
ダメだよって言ったこと、チャンはまだ一つも守ってくれてない。
「ほら、タオル」
「ねぇ」
「ん?」
「チャンの手首の傷見て、どう思った?」
「あー・・・なんていうか、らしいなって思った」
「え?」
「あ、そうだ。ほら、忘れもん」
「あ」
ちょっと前までチャンの手首にあったそれ。
チャンが自分で外して、地面に落ちて・・・
そのまま、放っておいた物。
「どうせ、お前がやったんだろ?」
「なんでそう思うわけ?」
「に似合ってたから」
「・・・え?」
「いや、そのブレスレットによく似合ってたからさ。まさか、その下に傷があるとは思ってなかったけど」
ただ、置いてあったブレスレット。
なんで、あんなのが僕の部屋にあったかなんて覚えてない。
ただ、チャンの傷を見てその存在を思い出して、チャンにあげた。
「ディーノくん」
「ん?」
「さっきの続き。どうして、チャンらしいと思ったの?あの傷見て」
「は気づいて欲しいから、あんな見えるとこに傷を作るんじゃねぇーかと思ったんだ」
あの傷はチャンからのサイン。
ディーノくんってホント、むかつく。
† 冷たくなった、猫 †
(あぁーあ、ホントにムカつくんだよねぇーディーノくんって!!)
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