† 雨よ、聖水となってこの身を清めておくれ、雨よ、刃となってこの汚れた身を貫いておくれ †
イライラ。
あームカつく。
チャン苛めていいのは僕だけなのに。
「チャン、帰るよ」
「は?」
「あ、別に置いて行ってくれてもいーぜ?もともとと二人でデートするつもりだったし」
「もう置いて行くつもりないから」
だって、チャンは僕のもの。
ディーノくんになんて絶対渡さないって決めたし。
置いていくくらいだったら無理やりにでも連れて帰る。
「ちょっと待ってよ、白蘭」
「ヤダ、待たない」
チャンの腕を強く引っ張れば、ディーノくんと繋いでいた手が解ける。
うん、満足。
だって、ムカつくんだもん。
当たり前のようにチャンに触れて、あんな顔させて。
「待ってって、ドン・ジェッソ」
「嫌」
「白蘭、痛い、腕」
なんてチャンが言うから腕の束縛は放してあげた。
だけど代わりに、チャンの腰を抱いて僕のほうに引き寄せる。
そんなことしたらチャンの顔は真っ赤。
「白蘭、なんか怒ってる?」
「うん、怒ってる」
2割くらいはチャンに。
残りの8割はもちろんディーノくんに。
「・・・・・・」
「チャン?」
「や、ヤダ・・・」
そういって、チャンは瞳にいっぱい涙を溜めて・・・
僕があげたブレスレットを外した。
カタンと、地面に落ちるそれ。
「ごめん、なさい・・・私、が、悪い、なら、ちゃんと謝るから」
涙を瞳いっぱいに溜めたまま、チャンの指の爪は、食い込む。
チャンの左手首に。
あぁ、あの傷はこうやってできたものだったんだね。
「!やめろって!」
ディーノくんがチャンの右手を掴んでその行為を止める。
そんな状況をただ一番近くにいて見ている僕。
あ、チャン、手首の傷僕以外に見せないって昨日約束したのに。
「私が悪いの、だから、こうすれば許されるかもしれないの」
そう言って、チャンは笑った。
本当は、この子はわかってる。
単なる気休めだってことに、単なる自己満足だってことに。
そんなことをして、許されることなんて殆どない。
「だから、止めないで」
チャンはディーノくんの手を払って、その行為に没頭する。
赤い線が深くなる。
チャンの指の爪が手首を行き来するたびに、赤がより深く、濃くなっていく。
その赤が、なんだかとても綺麗だと僕は思った。
◇◇◇
が泣きそうな顔してる。
そんな様子を天は汲み取ったのか、降り出すのは雨。
しかも、集中豪雨。
「おい、ドン・ジェッソ!とりあえず、どっか屋根のあるとこに急ごうぜ!」
動く様子を微塵も見せない二人。
とりあえず、掴んだの手を引いて走り出す。
恐らく、そうすればアイツはついて来る。
「あーもう、どこ行けばいいんだよ!」
道々の店を見ても、どこも人が溢れ返っている。
まぁ、当然といえば当然。
時間的にはティータイム。
おまけにこの集中豪雨。
「ディーノくん」
「何だ?!」
「あそこでいいんじゃない?」
「え、あそこって・・・」
「うん。でも、チャン風邪引きそうだし」
「・・・仕方ないか」
ドン・ジェッソが指差すのは・・・路地裏一角。
昼間っからネオンをギラギラさせてる世界。
いわゆる、ラブホ。
てか、三人で入れんのかよ。
「」
「・・・・・・」
焦点が合わない目。
さっき、子ども扱いを嫌がった可愛い女の子と同一人物とは思えないほど、静かな空気。
「風邪引いちまうと困るから、ごめんな?」
そう言って頭を撫でてやれば、コクンと頷く。
どうせなら、もっと違う顔見たかったなって思う。
こんな状態じゃない時にこんなところ連れて来たら可愛い反応見せてくれそうだし。
そっちのほうが、見たい。
† 雨よ、聖水となってこの身を清めておくれ、雨よ、刃となってこの汚れた身を貫いておくれ †
(俺は笑って欲しいんだ、お前に。)
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