† 大丈夫、そう言って笑う君の頬には涙の後が残っていた †










「うわぁぁぁんっっ白蘭のバカヤロウーーー!!!」




ドン・ジェッソが見えなくなったと同時に泣き出したのは目の前の女の子。

さっきまで、かなり強気だったのに一転。

あーなんていうか、ほっとけねぇーんだよなぁーこういうの。




「ロマーリオ。俺、今日泊まりだったよな?」


「あぁ」


「じゃあとりあえず、この子部屋に連れて行くわ」


「あぁ、そうしてやったほうが良さそうだな」




幸い、パーティーに夢中な人間が多いせいでこの騒動に気づいている人間は少ない。

なら、連れ出しても問題ないだろ。




「おーい、ー。歩けるかー?」


「・・・え?」


「とりあえず、部屋に行こうぜ。ここじゃ目立つから」


「・・・・・・」


「大丈夫だって。ロマーリオたちもいるし、な?あ、ロマーリオっていうのは俺のファミリーで・・・」


「知ってる。ディーノの右腕だよね」


「あぁ」


「・・・ごめんね、なんか」


「いいって。それより、歩けるか?」


「ん、歩ける」


「じゃあ行くか」




















◇◇◇





















「うわぁーんっうわぁーんっっ白蘭のバカヤロウーーーっっ」


「そうだよなーさすがに置いて行くのはひどいよなー」


「ディーノもそう思うよね、思うよね!」


「てか、ドン・ジェッソも大人げないよなぁー」




多分、あれはヤキモチ。

もちろん、俺に対して。

しかも、が追いかけようとしないから余計に苛々してそうだよなぁー。

もっとも、なんていうか・・・ヤキモチ妬いて苛々してることに気づいてなさそう。




「もういいもん、飲んでやるーーっっディーノ!ワインないの?!さっきのは?」


「あーロマーリオ、さっきのワインどうしたっけ?」


「そんなこともあるかと思って持ってきたぜ」


「だってさ。よかったなぁー」


「わぁーい」


「あとは備え付けのが赤と白と一本ずつだな」


「まぁとりあえず、さっきのから飲むか」


「いいのか?」


「あぁ。飲みたがってるし」




もう、これ以上何言っても無駄。

絶対飲もうとするような気がするし。

この部屋にいる以上は問題ないだろうしな。




「・・・わかった。グラス用意してくる」


「よろしくな」


「ね、ディーノ。いいの?ホントに・・・私、今日出逢ったばっかりだし」


「いいって。折角だし、出逢った記念ってことで乾杯しようぜ」


「ほら、ボス。グラス」


「サンキュ・・・じゃあ、乾杯」


「乾杯ー。あぁーっやっぱりディーノは話わかるーーー!!!」


「ははっまぁ話くらいなら聞いてやるよ」


「ホント?!めいいっぱい愚痴っていい?」


「そんなにあるのかよー」


「あるあるっまだ出逢って三日だけどね!」


「え、出逢って三日?」


「うん。三日前に日本で出逢って、スカウトされて・・・ファミリー入り」




出逢って三日でドン・ジェッソにタメ口とはなぁー。

まぁ、なんだかんだ言って俺に対してもタメ口な気がするけど。

俺は大して気にしないけどな。




「しかもね、ファミリー入りするのも強制連行で強制決定だったんだよー」


「ははっ・・・」




もう、笑うしかねぇーな。

てか、飲むペースかなり速くねぇ?

もう、グラス空いてるし。




「ディーノーおかわりー」


「はいはい」


「あぁーっディーノー好きー好きだよー」


「え?」


「落ち着くし、なんかお兄ちゃんみたいー」


「あーそういう意味な」




一瞬、ドキッとした。

好きなんて目を見て言いやがるから。

・・・てか、ドン・ジェッソが酒を止めた理由がなんかわかったような気がするな。

コイツ、確かに性質が悪いタイプ。

絡み癖がひどい・・・まぁ、なんか可愛いんだけど。

頭撫でてやれば笑うし。




「んにゃーディーノー?どーしたのー?」


「いや、ちょっとドン・ジェッソの気持ちもわかるなって」


「うわぁーんっっディーノも私が悪いって言うの?!」


「ごめんごめん。悪くない、悪くないよ。お前は」


「・・・・・・」


「ごめんって。機嫌直してくれよな?」


「ボス」


「ん?どーした?」


「ほら、嬢ちゃんに。飲むばっかじゃ良くないだろ」


「お、サンキュー。ー飲むだけじゃなくて食え」


「あ、おいしそー」


「ロマーリオが用意してくれたんだ」


「おぉーロマーリオさーん、ありがとー」


「ははっ完璧できあがってんな、嬢ちゃん」


「ディーノってやっぱりいい人だよーてか、キャバッローネっていい人ばっかー」


「ははっありがとな」


「・・・・・・うぅ・・・っ」


「どーした?!」


「白蘭は、私のこと、嫌いになっちゃったのかな・・・」


「いや、」


「私、捨てられたのかな・・・私、どうすればいいんだろ・・・」




瞳いっぱいに溜めた涙。




「イタリアとか知らないし、一人ぼっちだし・・・誰も私のことなんて知らないんだよ」


「俺が知ってる」


「え?」


「俺はお前のこと知ってるんだけど」


「ディーノ・・・」


「だから少なくとも、一人ぼっちではないだろ?」




俺だけじゃない。

ロマーリオだって、のこと認識してるし。




「それにな・・・多分、ドン・ジェッソがお前を捨てるとは俺は思わない」


「そんなことないよ。あの人は捨てるときはきっと一瞬」


・・・」


「なんで、私言うこと聞かなかったんだろ・・・一人になんてなりたくないよぉ・・・」




ぽろぽろと流れる涙。

切実な願い。




「一人じゃないだろ?」




小さな身体を抱きしめてやれば、腕の中にすっぽりと納まった。

瞳にはまだ涙が溜まって、頬を伝って・・・流れる。




「ディ、ノ」


「お前は一人じゃねぇーよ」




そう言ってやれば、または泣き出した。

声を抑えることもなく、ただ、俺にしがみついて。










† 大丈夫、そう言って笑う君の頬には涙の後が残っていた †

(・・・なんていうか、放っておけないタイプだよな・・・)



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