† 僕の元から逃げ出すのなら殺してあげる †
「あ、そうだ。もう一回聞いちゃおう。君、名前は?」
「・・・。」
もう、いいや。
名前言っちゃえ。
どうせなら、名前で呼んで欲しいし。
・・・こっそり、白蘭のこと好きだし、怖いけど。
「そっかーチャンって言うんだ」
「そーですよ、そうですよ。悪いか!改名しろっていうの?!」
「んーん。・・・チャン、可愛い名前だね」
「なっ?!」
「あはっまた赤くなったー」
「だ、黙れ!馬鹿馬鹿白い悪魔!!!」
「なんか、チャンって・・・苛めたくなるタイプだよねー」
「え、ヤダからね」
「ついつい苛めちゃいそう。可愛いから」
「可愛くないから!あぁーもう!何、社交辞令に答えてんのよ自分!!!」
「社交辞令じゃないんだけどなぁー」
「聞きませーん、聞こえませーん、信じられませーん」
だって、私一般人だし。
普通の女の子っていうお墨付きを白蘭サマから頂いちゃったし。
あぁ、でも・・・
強いて言うならば、私もう女の子って歳じゃない気がする。
「うん、ついつい苛めちゃったらごめんね?」
「いや、ホント無理だから。怖いのとか嫌だから」
「大丈夫。怖いことなんてしないし」
「信用できませーん!!」
さっき、思いっきり脅されたし。
正直、怖かったし。
マジ殺されるかと思ったし!!!
私、絶対に涙目だったもん。
「大丈夫大丈夫。そのうちチャンだって快感になるかもしれないでしょ?」
「私、そんなドMじゃないから」
「えぇードMっぽいよー」
「違うから!Sっ気がしっかりあるって思ってるから!」
「うん、確かにSっ気はありそうだよねー。でも、自分よりSな人間には弱そう」
「なっ」
「あ、図星ー?」
「そんなことないもん、ないもん・・・!」
図星だけど、図星だけど・・・!!!
そんなこと、認めたら・・・苛めて欲しいみたいじゃん・・・!!!
そんな風に思われるのはなんか嫌!嫌!
「うん、やっぱり苛めたくなっちゃうなぁー」
「うぅ・・・やっぱりイタリア行かない!」
「ダーメ。強制連行決定だし」
「降ろせ!おーろーせー!」
「うん、降ろしてもいいけど・・・えへ、殺しちゃうかも」
「なっ」
「ほら、僕・・・欲しいものは絶対手に入れたいタイプだから」
「・・・・・・そんなイメージはある・・・」
「手に入れられないなら壊したほうが早いし」
「サロメみたいだね」
「あぁ、あれ?手に入らないなら殺してしまって・・・自分のものにするってやつ?」
「そう」
「うん、近いかもしれないねぇー。チャンはそうは思わない?」
「・・・ちょっと思うけど、でも結局・・・私には殺すなんてことできないんだと思う」
「とりあえず、チャンはイタリア行くのは決定。一ヶ月経ってもし、ウチのファミリーが嫌だったら逃がしてあげる」
「え?」
「でも・・・絶対また捕まえるから。逃がしてなんてあげない」
「何、それ」
「うん、これが僕ルール。今考えたんだけどねー」
「・・・わかりました、わかりましたよ!とりあえず、一ヶ月楽しませてくださいー」
「うん、もちろん」
もう、どうにでもなれ。
だって、まだ・・・現実味もないし。
そうだ、夢かもしれない。
寝て、起きて、目が覚めたら・・・全てがいつも通り、いつも通り。
とりあえず、飛行機・・・じゃなかった自家用ジェットで思いっきり寝てやろう。
◇◇◇
「無防備なものだねぇ・・・」
安心されてるのかなぁ・・・僕。
あははっそれはそれでいいか。
この子、面白いし。
「ねぇ、チャン。君はどこから来たのかな?」
パラレルワールドを渡ってきて、
ある時から毎回のように君は現れた。
僕の、前に。
いつもと同じように、僕の上に突然落ちてきた。
「今度は死なないでね、チャン」
† 僕の元から逃げ出すのなら殺してあげる †
(おやすみ。僕の可愛い可愛いオヒメサマ。)
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