† 一目会ったその瞬間から †
出逢いは綺麗なものだった。
◇◇◇
「あ」
「きゃっ」
「ごめんねー大丈夫?」
「あ、はい」
「・・・嘘つき。大丈夫なわけないでしょ?」
真っ白のドレスにかかったのは赤ワイン。
胸元に赤い染みが広がる。
「いえ、大丈夫です」
・・・なんか、面白いなぁーこの子。
大丈夫じゃなくせに、大丈夫だと言い張る。
困って泣き出しても可笑しくないはずなのに。
・・・というか、この子くらいの年齢の女の子だったらまず泣き出す。
「君、何処のファミリーの子?」
「カナリーノファミリーのボスのです」
「へぇー!君がカナリーノファミリーのボスなんだー」
まだ、少女と言える人物。
確か・・・先代ボスが亡くなって、最近代替わりしたって話だったかな・・・
「えっと・・・ジェッソファミリーの白蘭サマですよね?」
「うん。あ、様はいらないよ。堅苦しいの嫌いなんだー」
「はぁ・・・」
「あ、そーだ。ちょっと手荒くなっちゃうけどごめんね?」
「え?」
疑問符を浮かべているチャンの胸元に、その辺に飾ってあったガーベラを挿す。
なすがままのチャン。
ガーベラを挿し続ける僕。
はたから見たら異様な光景だろうね。
まぁみんなパーティーに夢中で僕たちに目も触れないのだけど。
「はい、出来上がり。これで赤ワインの染みは目立たないよねぇー」
「あ、ありがとうございますっ」
「んーん。赤ワインかけちゃったのは僕だし」
「ガーベラ、すごく綺麗・・・」
にっこりと僕に笑いかけるチャン。
君のほうが綺麗だよ。
すごく、すごく綺麗だよ。
ガーベラよりも、ずっと、ずっとね。
「様!!」
「あ、」
「またお一人で勝手に・・・!!!」
「ご、ごめんなさい!許して?」
「はぁ・・・様。あなたはカナリーノファミリーのボスだということを忘れないで下さい」
「・・・うん、わかってる」
「・・・・・・それでは、そちらの方は?」
「ジェッソファミリーのボスの白蘭サマ」
「チャン。サマはいらないって言ったでしょー」
「ジェッソファミリーのボス?!・・・我がボスがご迷惑をおかけいたしました」
「んー・・・別に迷惑なんてかけられてないよー寧ろ僕が迷惑かけちゃったし」
チャンの胸元を指差しながら言葉を続ける。
「僕がチャンに赤ワインかけちゃってねぇー」
「ガーベラ、とっても綺麗でしょ?」
「確かに綺麗ですが・・・」
「白蘭が挿してくれたの」
「・・・白蘭様、やはり我がボスがご迷惑をおかけいたしましたようで・・・」
「大丈夫大丈夫ー」
「はぁ・・・」
† 一目会ったその瞬間から †
(僕は君に恋をした。だから、君を奪うよ。)
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