† 閉じ込めたって貴方のものにはならないのに †
「あ、白蘭サン」
「あ、正チャン。どーしたの?」
「いえ、別に理由が合って声をかけたわけではないんですけど・・・」
前から歩いてきた白蘭サンの手には大きなクマのぬいぐるみとアフタヌーンティーセット。
それは鳥籠に向かうという合図。
「今からですか?」
「うん。アフタヌーンティーの時間なんだー」
白蘭サンは1日4回鳥籠に向かう。
1日3回の食事と1回のアフタヌーンティー。
「あ、夕方からの会談忘れないで下さいよ」
「わかってるよー」
「・・・じゃあ、気をつけて」
「また後でねー」
白蘭サンを見送りながらふと思う。
あの囚われたカナリアはまだ、生きているのだろうか。
そして・・・
白蘭サンは今、この状況が幸せなのか、と・・・
「・・・なんて、僕が考えても仕方ないな」
◇◇◇
「チャン、入るよー」
僕の声に一瞬反応を見せて、またベッドにもぐりこむ鳥籠のカナリア。
「そろそろ起きなよーアフタヌーンティー持ってきたから」
ベッドにもぐりこむチャンを引きずり出せば、その顔は歪む。
あ。
この顔好きだなぁー・・・
「今日はダージリンとそれにあわせたケーキだよ」
チャンが睨みつけてくるのを無視して言葉を紡ぐ。
ベッドから引きずり出されて立ち竦んでしまっているチャンの手を引いてテーブルの元に。
鳥籠には必要設備はなんでも揃っている。
僕が揃えたんだけどね。
空調も完璧だし、このジェッソ本部で一番快適な空間かもしれないなぁー。
「はい、どうぞ」
半ば強制的に椅子に座らせ、チャンの目の前のカップに紅茶を注ぐ。
なんだか僕、執事みたいだねぇー。
絶対、チャンにしかしないけど。
「あ、今日は夕方に会談一つ入ってるから夕食ちょっと遅くなるかも。だから、待っててね?」
チャンは何も喋らない。
囚われた、鳴かないカナリア。
チャンはジェッソファミリーが壊滅させたファミリーのボス。
今はもうチャンしかいない、ファミリー。
だって、チャン以外殺しちゃったから。
「何か食べたいものあるー?」
喋らないことをわかっていながらも言葉を紡ぎ続ける。
チャンが喋らないのは僕の所為。
本当は喋れること知ってるよ。
でもね、僕以外にその声を聴かせないで欲しい。
だって君はカナリア。
僕だけのカナリア。
「あ、これあげる。クマのぬいぐるみ」
「・・・・・・」
「さーってと、正チャンに怒られるの嫌だし会談行ってくるねー」
† 閉じ込めたって貴方のものにはならないのに †
(僕はこの鳥籠に君を閉じ込める。ずっと、ずーっとね。)
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