† 君と約束はしないよ †
「ん?」
電話?
今、授業中。
しかも、発信者・・・
忍足侑士。
嫌な予感。
「おい!跡部!」
教室から出て行こうとする私を制する教師の声。
無視、決定。
当然でしょ。
「跡部!!」
「」
「何?雅治」
今回は、雅治が止めても行くよ?
最も、雅治が止めるはずないけど。
「一人で大丈夫か?」
「・・・・・・」
「俺も一緒に行くかえ?」
「大丈夫。それより・・・先生とノートよろしく」
雅治が得意な数学だし。
雅治のノート、綺麗だし。
「・・・・・・了解」
◇◇◇
まだ鳴り続けてる携帯。
侑士もなかなか強情。
授業中だろうに、ね?
「もし、もし?」
「ちゃんやな?」
「ん、跡部様」
「落ち着いて聞きや」
「景吾に何があった?」
「・・・・・・倒れた」
「景吾が?」
「あぁ・・・授業中にや」
だから、授業中に電話・・・ってわけか。
そりゃ、景吾が倒れたら学校中パニックだわ。
電話も掛け放題。
「今、どこにいる?」
「病院に運ばれた」
「りょーかい」
景吾が運ばれる病院なんて決まってる。
いつもの病院。
昨日、私が輸血を受けた病院。
景吾、から。
「・・・馬鹿、景吾」
◇◇◇
電話越しのちゃんはやっぱり落ち着いとった。
「跡部、怒るやろなー」
運ばれる瞬間、跡部と目が合った。
声に出ることのなかった言葉。
それは・・・
『には絶対に言うな』
やった。
恐らく、やけどな。
「悪いなぁ、跡部」
俺は、お前と約束する前に・・・
ちゃんと約束してたんや。
ちゃんとの約束は、跡部に何かあったら教えるというもの。
跡部との約束は、何かあってもちゃんに教えないということ。
最も、跡部との約束には頷いたりもしてない。
つまり、契約は成立していない。
「おーい!侑士ー!」
「なんや?岳人」
「跡部妹に電話、終わったのか?」
「あぁ、終わったで」
「で、どーするんだー?今から」
「そうやなぁー・・・」
病院行ってもええねんけどなぁー・・・
ちゃんも行ってるやろうし。
とりあえず、跡部に恨めしい顔で睨まれるのは絶対。
「今日はおとなしく待ってよか」
ちゃんからの連絡を。
絶対、ちゃんは一言連絡を入れてくる。
これが、ちゃんとのもうひとつの約束。
「ホンマに大変やなぁー・・・あの溺愛兄妹も」
† 君と約束はしないよ †
(悪いな、跡部。ちゃんとの約束破るわけにはいかへんねん。)
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