† 乾いた大地を歩んで、赤い滴が零れる身体を抱き締めて †
「あーあ・・・またやっちゃった」
手首から血は流れる。
鮮血。
真っ赤な血。
「あっちゃーシーツ汚れた。またメイドに怒られるー」
ヤダなぁ・・・
切ることは怒りはしないけど、汚したら怒られる。
血は、なかなか落ちないから。
自分で洗濯しろとか言われたらどうしよう?
うわぁー・・・家の洗濯機、どこにあるのかすらわかんない。
「それに・・・」
景吾にまた、哀しそうな顔させちゃう。
自分の手首を切ってもそんなに痛みを感じなくなったこの身体。
でも、景吾の哀しそうな顔を見ると痛い。
景吾だけじゃない。
最近は・・・沢山の人の哀しそうな顔を見るのが痛い。
「はぁ・・・どーしよっかなぁ」
「どうしよう、じゃねぇーだろ」
「景吾」
あーあ、見られちゃった。
っていうか、女の子の部屋に入る前はノックするべきでしょ。
まぁいつものことだし慣れてるけど。
「痛いか?」
「んー・・・・・・」
「消毒するぞ」
「・・・ん。景吾」
「・・・何だ?」
「いつもゴメンね」
「ばーか」
私の頭をくしゃくしゃってして、景吾は少し笑った。
◇◇◇
誰かが口を出していい問題ではない。
わかってる。
それくらい、遠の昔から・・・
「・・・ったく、そんな顔するなよな」
「どんな顔してる?」
「苦虫潰したような顔」
「うわぁーそりゃ最悪な顔だわ」
が手首を切るのは苦しい時。
主に泣きたい時。
泣けばいい。
そんなこと何度言った?
でも、言ってもはきかない。
「ねぇー景吾」
「・・・・・・なんだ?」
「あのさー・・・メイドに怒られると思う?」
「怒られるだろうな」
「うわぁーそれ、メッチャ嫌なんですけど」
「怒られるのが嫌なら自分で洗いやがれ」
「んー面倒。っていうか、洗濯機がある場所すらわかんない」
「・・・・・・俺も知らねぇー」
「やっぱり?」
っていうか、この家に洗濯機なんてあるのか?
基本的にクリーニングで済ませているような気がするな・・・
「景吾、テニスしよ、テニス」
「はぁ?」
「思いっきり身体動かしたい気分」
「倒れるぞ」
「あー・・・」
「お前が倒れてもいいなら、付き合ってやる」
「んーじゃあいいや。テニスはなし」
「いいのか?」
「ん、いい。また普通の時にやろ」
† 乾いた大地を歩んで、赤い滴が零れる身体を抱き締めて †
(お前が泣くなら俺はお前を抱きしめる。)
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