† 傷つくことしか知らない心 †










「またおサボリサンかえ?」


「雅治」


「あー・・・また切っちょるん?」


「ん」


「やめんしゃい」


「・・・ん」




雅治は私の手にあったカッターを奪い取った。

私の血が、雅治の指を汚す。




「あーあ、雅治の指、汚れてる」




そんな言葉を吐き出せば、雅治の舌がその指の血を舐め取る。

綺麗になる指。

血だらけの私の手首。




、手」


「ん?」


「貸しんしゃい」


「んー・・・」




血で染まった反対の手を差し出してみる。

雅治の言いたいこと、わかってるのに。

天邪鬼な私。




「反対」


「ん、わかってる」


「はぁ・・・変わらんのぉ・・・」


「何が?」


「捻くれたトコ」


「ん」


「反対の手、貸してみんしゃい」




大人しく、血で汚れた方の手を差し出す。

一瞬、雅治の綺麗な顔が歪む。




「あー・・・また今日も見事じゃな」


「・・・・・・」


「痛い?」


「ちょっとだけ」




手首のキズじゃなくて、心が痛い。

雅治の哀しそうな表情見て、痛む心。




「心が、痛い?」


「・・・ん」




ちょっと笑って雅治は傷口を舐め始める。

あーあ・・・雅治の制服、血がついちゃってる。

白いカッターだから目立つのに。




「汚れちゃったね」


の血で汚されるなら、別によか」


「ばーか」


もばーか」


「うわぁー馬鹿扱いされた」


「お互い様じゃ」





















◇◇◇




















増えるキズは、止めればいい。

自分が止める限り。

は綺麗でいられるような気がしちょった。

いや、違う。

血に染まっていてもは綺麗じゃ。




「雅治ー」


「ん?」


「サボってていいわけ?」


「俺を誰だと思っちょるん?」


「んー・・・あっそっか、詐欺師だったね」


「ご名答」


「学校に詐欺師がいて先生も大変だわ」


「俺よか問題児がいるんじゃ、大して目立たん」


「雅治より問題児ー?」


「そ、俺の目の前に」


「あー私?」


「お、自覚あったんじゃね」


「雅治が目の前に、とか言うからじゃん」


「そーか」


「そうだねぇ・・・確かに問題児だなぁ。リスカ常習犯だし?」




違う。

そんな言葉言わせたくなか・・・




「ちょ、ちょっと、雅治。離しなさい」


「イヤじゃ」


「もー・・・」




抱きしめた身体は予想以上に細い。

ちょっと力を入れてしまえば折れてしまいそうじゃ・・・




「好いとぉよ」


「ん」


「俺はお前を止めたいんじゃ」


「・・・ん」


「でも、自分で出口は見つけんしゃい」




お前が出口を見つけるまで。

ずっと一緒にいちゃるから。

ずっと、ずっと・・・待っちょるから。









† 傷つくことしか知らない心 †

(ずっと、ずっと、お前が出口を見つけるの待っちょるから。)



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