† この消えない心の傷にきっと一生縛られるんだろう †
「ったく・・・また増えたのかよ」
「景吾」
「そろそろ止めろよ」
新しく増えた手首の紅いキズを景吾は舐め始める。
景吾は私の手首のキズを舐めるのを厭わない。
私も、ソレを厭わない。
止めろ、の言葉もいつものこと。
でも私が止めないこと、止められないことを知っている。
「ん、そのうち」
「・・・・・・」
「景吾、そろそろ離して。くすぐったい」
景吾がキズが増えるたびに執拗に舐めるのはいつものこと。
その行為はまるでこのキズを消すかのようで・・・
消えるはずがないのに。
それでも、景吾は止めない。
「飯、食いに行くか?」
「・・・ん、いい」
「・・・食べたいものは?」
「ない」
あっちょっと怒ってる。
即答しすぎた。
「ゴメン、景吾」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「絶対に、無理やり食わせてやる」
「うわっ景吾がキレた」
「吐くまで食わせるからな」
「ヤダ。それ非常に困る」
「なら食える物言え」
「・・・・・・果物」
「それだけか?」
「ん、苺希望」
「わかった、用意させる」
「・・・・・・ゴメン、景吾」
「謝るな」
「ん・・・ありがと」
◇◇◇
の手首のキズは消えない。
消えればまた増える。
その繰り返し。
「景吾って包帯巻くの上手だよねー」
何度もやってりゃ慣れる。
もう何度目か、数えたくもない。
この手首に何度包帯を巻いたか・・・
「綺麗、綺麗」
「外れたらまた言えよ」
「ん、了解」
コンコン。
「景吾様、苺のご用意が出来ました」
「あぁ、持ってこい」
「はい」
メイドから苺の入った容器を奪う。
苺の色は、の血の色。
「下がれ」
「はい、失礼致しました」
「ほら、。食え」
「んー・・・食べさせて」
「はぁ?」
「あーん・・・」
自分の手を動かすことなく、口を開ける姿。
口の中に苺をひとつ放り込んでやれば満足な顔が見える。
「・・・美味いか?」
「ん、ありがと」
「もっと食えよ」
「ん・・・あーん」
が口を開ける度に苺を放り込む。
甘やかしすぎ。
わかってる、それくらい。
「景吾、ご飯は?」
「もう食った」
「そっか」
リスカをやめさせればいい。
簡単なことだ。
刃物を持たせなければいい。
だが、はそれを望まない。
俺は・・・の望みは何でも叶える。
それが例え・・・の身を滅ぼすとしても。
† この消えない心の傷にきっと一生縛られるんだろう †
(それでも俺は、お前の傍にいる。)
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