† 諦めなければ叶うこともある †










カタン。





小さな音が響く。

・・・・・・誰かに聞かれたか?




「誰じゃ?」


「・・・ご、ごめんなさい・・・」


?」




一番聞かれたくない人に・・・

聞かれた。




「その・・・聞くつもりはなかったの・・・」




ごめんなさいと謝る姿。

謝らせたいわけじゃない。

顔を上げて、いつもみたいに笑いかけて欲しい。




「本当に・・・ごめんなさい」




一番好きな女に・・・一番見られたくないところを見られた。

女と別れるところ。

酷い男の俺。




「ごめんなさい・・・っ」




そういって走って行ってしまう。

止められない俺。




















◇◇◇





















「仁王」


「覗き見なんて悪趣味じゃね、幸村」


「そんなつもりはなかったんだけどね」


「・・・・・・」


「どうするつもり?」


「何がじゃ?」


のことだよ」


「別に・・・」




どうするつもりもない。

酷い男には癒姫は勿体無い。

近づいてはいけない存在。

キラキラして、眩しくて・・・

つい、優しさに甘えてしまう自分がいた。




は弱い子じゃないよ」


「・・・・・・」


「お前を受け止めるだけの心を持っている」


「・・・そんなことわかっちょるよ」




癒姫の心の広さ。

多分、俺が甘えればその優しさで包み込んでくれる。

でも、甘えてはいけない。




「諦めるの?」


「あぁ・・・」


「そっか・・・別に俺はそれでも構わないよ」


「寧ろ嬉しいんじゃろ?」


「仁王」




幸村の怒りを帯びた声。




「俺はに幸せになってもらいたいと思っているよ」


「俺と一緒にいてもは幸せになれんよ」


の幸せはが決めるものだ」


「・・・・・・」


「ただひとつ言えることがある」


「・・・何じゃ?」


「最近のはね、お前といる時が一番笑顔なんだよ」




その言葉を聞いて俺は走り出した。

の走って行った方向へ・・・




















◇◇◇





















「世話のかかる奴だね」


「優しいじゃん、部長さん」


「特別だよ」


「どうなるかな、あの二人」


「さぁ・・・的にはどうなって欲しい?」


「当然、が笑っていればいいに決まってるじゃん」


「確かにね」


「・・・本当は追いかけるつもりだったんでしょ?を」


「俺が追いかけるよりも仁王が追いかける方がいいからね」


「仁王、付き合ってた女たちと全部切ったんだって」


「・・・みたいだね」


「本気になったってさ」


「後はあの二人次第かな」










† 諦めなければ叶うこともある †

(願わくば彼女が幸せでありますように。)



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