† 物事は何が起きるかわからないものだ †










「あっ雅治くんー!」




ナイスタイミングじゃね。

所謂場面はお取り込み中な場面。

俺にキスをせがむ女。

キスをしようとする俺。

そして・・・何も知らない




「ご、ごめんなさいー!」




なんて言い残して走っていく。

そのまま走って去れればカッコがつく。

でも、はちょっと走って・・・・・・こけた。

お約束な子じゃね。




「・・・痛ー」




あーあ、多分擦りむいちょるね。

涙を堪えてる姿が目に浮かぶ。




「ちょ、ちょっと!雅治!?」




俺にキスをせがんでいた女の声が聞こえる。

でも、俺はその女の声なんか聞きもしなかった。




「大丈夫か?」


「ま、雅治くんー?」




近づいて後ろから声をかければ驚いて振り向く。

予想的中。

目には涙が溜まっている。




「とりあえず、保健室じゃね」




そういって、疑問符を浮かべているを抱き上げる。

小さくあがる悲鳴。




「重いよー?」


「全然重くなか」




本当に軽い。

羽根が生えたようなっていう表現が似合う。




「・・・なんかごめんねー・・・」


「俺が勝手にやってることじゃから・・・気にすることなかよ」


「ありがとうー・・・」




そういえば・・・

こうやって所謂お姫様抱っこなんて初めてしたかもしれんのぉー。




















◇◇◇





















「うぅー沁みるー」


「我慢しんしゃい」


「はーい」




椅子に座らせて消毒をする。

自分でするというの声を制して、俺が。

誰かの消毒なんて初めてした。




「雅治くん・・・その、ごめんねー」


「何がじゃ?」


「その・・・消毒もだし・・・邪魔しちゃってー」


が気にすることなか」


「でもー」


「いいんじゃ」


「・・・・・・」


「ほら、消毒終了じゃ」


「ありがとー・・・」


「そういや、俺に何か用?」


「あっそうだーカップケーキ作ったのー!」


「俺のために?」




なんて聞いてみる。

の反応が見てみたかったから。




「雅治くんとブン太くんのためー」


「・・・丸井?」




・・・・・・あとでしめるか。

覚悟しときんしゃい、丸井・・・




「そう!リクエストしてもらったのー」


「ふーん・・・」




何となくムカつく。

の手作りのお菓子が食べたいって言ったのは多分、俺。

それなのに丸井のリクエスト作品。




「どーしたのー?」


「・・・・・・」


「雅治くんー?」


「クッキー」


「えー?」


「作って?俺のために」


「雅治くんのためにー?」


「そう、俺のために。ダメ?」


「ううん!ダメじゃないよー!明日作ってくるね、雅治くんのために」




俺の我侭にも笑って答える。

そんな女は何人も見てきた。

だけど、はなんか違う。




「楽しみにしちょるよ」


「頑張るねー」


「これ、食ってもよか?」




可愛らしくラッピングされたカップケーキを指す。




「うん、もちろんー!」




口の中に広がる程よい甘さ。




「美味い」


「本当?よかったー!」




手作りのお菓子を持ってくる女もたくさんいた。

正直あまり好きじゃなかった、甘ったるい味。

どれも同じ、甘いだけのもの。

でも、これは違う。

心から美味いと思える、優しい甘さ・・・・・・










† 物事は何が起きるかわからないものだ †

(・・・なんか、俺らしくない気もする。)



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