† 愛とか情とか心とか、そんな見えないあやふやな物に振り回されるなんてごめんだ †
4月15日、金曜日。
天気は晴れ。
4時間目、体育の授業中に紳士のレーザー直撃。
俺は保健室に連れて行かれる運命となった。
「しかし、仁王くんが珍しいですね」
「寝不足なんよ」
「また夜遊びですか?」
「・・・ピヨ」
「程ほどにしておいてくださいね」
紳士の小言を聞きながら着いたのは保健室。
「失礼します」
保健医がいるはずの場所。
しかしそこにいたのは・・・
「はーい?」
保健医ではない女。
・・・どこかで見たことがある気はする。
「怪我したのー?」
「えぇ、こちらの仁王くんが・・・」
今まで付き合った女ではとりあえずない。
もちろん、今付き合ってる女でもない。
「仁王くんー?うーん・・・どこかで見たことある?3年生ー?」
「あぁ、3年じゃ」
「そっか、一緒の学年だったら見たこともあるはずだねー」
俺のことをよく知らないと見た。
一応俺も有名なんだけどねぇ・・・
”女泣かせの詐欺師”とかその他諸々。
「で、仁王くんはどこ怪我したのー?」
「腕」
「はーい、じゃあ見せてー?」
「先生はいらっしゃらないのですか?」
「えっとねー急に出張らしくて、代理頼まれちゃったー」
さすが代理を頼まれるだけのことはある。
腕に綺麗に巻かれた包帯。
素早い処置。
・・・思い出した。
体育祭で救護テントで怪我人を治療してた・・・気がする。
最も俺は怪我なんてしないし、傍を通り過ぎただけだけど。
「はい、完成ー」
「どーも」
「お大事にー」
ヒラヒラと手を振る女。
取り繕ったような笑顔じゃなくて、自然の笑顔。
俺には到底出来ない笑顔。
◇◇◇
「彼女、さんですね」
「?」
名前なんて言われてもわかるはずがない。
「えぇ、保健委員長のさん。体育祭では救護テントで頑張っていらっしゃいましたね」
「あーそれは見覚えがある気がするのぉ」
ただ、見覚えがあるだけ。
「確か幸村くんが同じクラスでしたね」
「よく知ってるのぉー柳生」
「えぇ、有名ですからね」
「サンがか?」
「仁王くんはご存知ありませんか?」
「さっぱりじゃ」
そんな女のことなんて知るはずもない。
名前を知ったのがついさっきなのだから。
「そうですか・・・」
「で、そのサンは何で有名なんじゃ?」
何となく、興味があった。
俺に自然に笑顔を向けられるという少女のことを・・・
「さんは”癒姫”と呼ばれているんですよ」
「癒姫?」
癒姫・・・
確かにその名が似合うかもしれない。
「えぇ呼ばれ始めたのは体育祭が終わってからでしたけどね」
「知らんかった・・・」
「まぁ仁王くんは知らなくても無理はないでしょう」
「どういう意味じゃ?」
「興味がなかったでしょう?」
「・・・・・・」
柳生の言う通りじゃ。
確かに・・・という女に全く興味もなかった。
まぁ女には声をかけなくても困らない。
”女泣かせの詐欺師”じゃからな。
「でも、今はちょっと興味ある」
「仁王くんが、ですか?」
「そうじゃ、悪いか?」
「いいえ、しかし・・・癒姫のガードは強いと思いますよ」
「ガード?ファンクラブか?」
「ファンクラブよりも・・・きっと大変です」
柳生の言うことはよくわからん。
まぁいい。
こういうことはもっと詳しそうな参謀に聞くとしようかのぉー。
◇◇◇
「柳」
「仁王か、どうした?」
「サン、知っちょる?」
「?か?」
「そう、癒姫じゃ」
「がどうかしたのか?」
「ちょっと興味があってのぉ」
「・・・・・・また遊びか?」
「酷いこと言うねぇー参謀」
「お前の日頃の話を聞いていれば言いたくもなる」
・・・確かにそうかもな。
参謀はやっぱりデータマンじゃからのぉー。
「で、どうなんだ?」
「わからん」
「何・・・?」
「何となく、興味があるだけじゃ」
「・・・珍しいな」
「・・・・・・」
「しかし、のガードは強いぞ」
「柳生も言っちょったが・・・どういう意味じゃ?」
「のクラスに行けばわかる」
「教えてはくれんのか?」
「あぁ・・・」
参謀もいけずじゃのぉー。
楽しみは後のほうがいいってことか?
てか、参謀も名前で呼ぶほど仲がいいのも意外じゃね。
「わかった、とりあえず・・・行ってみるかのぉ」
「俺も行こう」
「データか?」
「あぁ、面白そうなデータが取れそうだからな」
「それはどうかのー?」
「仁王が他人に興味を持つなんて珍しいしな」
「あー・・・何となくじゃ」
「しかし、遊び相手には出来ないと思うぞ。は」
「そんなのはわからんよ?」
女なんて付き合ってみないとわからない。
それはどんな女にも言えること。
「逢ってみればわかる」
「サンと面識はあるぜよ」
「じゃなくてガードにだ」
柳の言うこともイマイチよくわからん。
まぁある程度仲は良いみたいじゃねー。
とりあえず、行ってみることにするか・・・
手強いらしいガードが待つサンの元へ・・・
† 愛とか情とか心とか、そんな見えないあやふやな物に振り回されるなんてごめんだ †
(さーってどんな手ごわい奴が現れるのか、楽しみじゃき。)
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