† 全てを見届ける者 †
「どーも、佐伯くん」
「わざわざすまなかったね」
「別にいいよ、ねぇ、ちゃんの写真とかある?」
「写真?」
「そう、笑顔の」
「・・・あるよ、部室の方にいっぱいね。皆が持ち込んだから」
みんなを大切にしていた。
は俺たちのお姫様だったから。
だから写真も多くある、もちろんどれもは笑顔だ。
「何処で話をしようか?」
「なるべく人が多くないところがいいよね」
「一応ね」
「屋上に行こうか、あそこなら人もいないから。あっちょっと待っててもらえる?部室から写真持ってくるから」
「オッケー」
◇◇◇
「・・・はい、これが写真」
「ありがとー」
渡されたアルバムの中のちゃんはどれも笑顔だった。
絶対に笑ってる。
笑顔以外のものは無い。
今では考えられないもの。
「笑ってるね、ちゃん。」
「うん、どれも可愛いだろう?」
「そうだねー」
「・・・もう、この笑顔を見ることはないのかな」
「それはわからない」
ちゃんが前に進むことを拒絶するのなら、もう二度と見ることは出来ない。
全てを乗り越えない限りは・・・・・・
「じゃあ話を聞いてもいいかな」
「・・・何から訊きたい?」
「まず、がああなった理由。それから・・・氷帝との関係」
「ちゃんの親友のちゃん、彼女が死んだことからはじまったんだ」
「そういえば言ってたな・・・親友と殺したって・・・」
「別にちゃんが殺したってわけじゃないよ。事故だったんだ。
子どもたちが遊んでたボールが道路のほうに飛んでいってしまってそのボールを拾おうとしたちゃんは車に轢かれそうになった」
「・・・・・・」
「そのちゃんをさんが助けたんだ。それでさんは・・・・・・」
「・・・・・・」
「さんもちゃんも氷帝テニス部のマネージャーだった。みんなに愛されていたちゃん、みんなに頼りにされていたさん。
ふたりとも彼らにとってかけがえの無い存在だったんだ。そしてそのかけがえのない存在のひとりを失った」
そして彼らは自分の気持ちを止めることが出来なくなった。
「かけがえのない存在を失った彼らの気持ちがわかるかな?それと・・・ちゃんの気持ちも・・・・・・」
「それで・・・は壊れてしまったんだね」
「うん、その通りだよ。
・・・だから彼らは俺に言ってきたんだ。ちゃんを正しい道へと導いてくれってね。今の自分たちにはそれができないからって」
氷帝の彼らも本当は自分たちがちゃんを正しい道へと導いてあげたかった。
愛している存在だから。
でも、彼らはちゃんを壊してしまった。
もちろん彼らだけの責任ではない。
◇◇◇
「千石、俺たちはを愛している。でも・・・・・・許せない。ではなく自分たち自身がな・・・・・・」
「俺らが傍にいたって姫さんは傷つくだけや」
「それに・・・俺達にいっぱいヒドイこと言ったし」
「本当に・・・激ダサだよな」
「悪いことしちゃったもんなー・・・俺たち」
「俺たちの思いを全て受け止めてしまったから・・・は壊れた」
「姫さんは悪ないのに、俺たちは・・・を失った不安を姫さんにぶつけてしまったんや」
「頼む、千石」
「ちゃんに道をあげて」
「が歩ける道をあたえてやってくれよ・・・!」
◇◇◇
「でも、俺にはちゃんを導くことが出来ていない」
「・・・今、氷帝はどう思っているんだい?」
「ちゃんと歩くための道を探している」
「・・・君はちゃんと正しい道へと導いたんだね、氷帝を」
に何も出来なかった俺。
でも、君は違う。
ちゃんと周りに影響を与えている。
が大切に想っている彼らの・・・新しい道を。
新しい道を示してあげたんだ。
「え?」
「氷帝を導くことによっても正しい道へと導かれるんじゃないかな?」
彼の話によると氷帝はかなり悩んだのだろう。
悩むきっかけを与えたのは他ならぬ彼なのだから。
「・・・・・・ありがとう」
「俺のほうこそありがとう」
◇◇◇
「サエちゃんー!」
「どうしたの、?」
「私ね、氷帝に行くんだ」
「・・・氷帝ってあの氷帝?」
「うん、あの氷帝」
「・・・・・・がいないと淋しくなるな」
「あははっそう言ってもらえるとなんか嬉しいね」
「俺をフリーにしちゃダメじゃん」
「フリー?」
「そう、俺をフリーにしちゃダメだよ」
「うーん・・・よくわかんないけどわかった」
† 全てを見届ける者 †
(君の笑顔が見たい。)
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