† 君の涙は小さくて、小さすぎて気付かなかった †
テニスコートの傍に女の子がいた。
一度だけ、英二が見せてくれた写真で見たことがある女の子。
確か名前は・・・ちゃん。
◇◇◇
「じゃーん!この子が俺の彼女!」
英二が指差す先には女の子。
どうやらこの子が英二の彼女らしい。
「って言うんだ!美人だろ?」
「うん、綺麗な子だね」
「だろー!!」
「彼女は氷帝に通ってるの?一緒に跡部達が写ってるし」
「うん、しかもテニス部のマネ!あっ手塚ー!見て見て!俺の彼女彼女!」
「・・・?!」
突然手塚が訊いたことも無い名前を口に出した。
手塚が女の子の名前を言うなんて珍しい。
「何だぁー?手塚知ってるのかにゃ?」
「菊丸はと付き合ってるのか?」
「違うにゃ!俺の彼女はこっち、!」
「・・・そうか」
「こっちの女の子がちゃん?」
「そうだにゃ!ちゃん、ちゃんはの親友なんだって」
「で、手塚とはどういう関係なの?」
「・・・・・・昔付き合っていた」
「えぇー!!」
「へぇー手塚でも女の子と付き合ったことがあるんだね」
「でも昔ってことは今は付き合ってないのかにゃ?」
「あぁ・・・・・・」
「手塚はまだ好きみたいだね」
◇◇◇
英二の彼女の親友で、手塚が昔付き合っていた女の子。
・・・でも、英二の彼女は死んだ。
何があったかは跡部達から聞いた。
◇◇◇
「が死んだ」
「な、何でだにゃ?!」
「・・・姫さんを庇ったんや」
「なんでが死ななきゃいけないんだよ・・・!!」
部室中に響き渡る英二の声。
恋人を失った悲しみ。
あの少女に対する怒り。
恨み。
「・・・俺たちは失礼する」
跡部達もそれ以上何も言わなかった。
でも、空気が悪いと言うことはわかった。
それはきっとあの少女にとっても。
「・・・・・・」
英二の泣き声で部室中にあの少女に対する怒りの感情が生まれた。
それはたった一瞬のことだけれど・・・・・・
◇◇◇
「・・・何をしているのかな?」
「あ、・・・あの、菊丸くんを呼んで頂けますか?」
「英二なら水道の方じゃないかな?水飲みに行ってくるって言ってたから」
「そうですか・・・・・・」
英二はまだ・・・彼女を恨んでいるのだろうか?
でも、きっと英二もわかっている。
「ありがとう、ございます」
軽く会釈をして行ってしまう。
僕は本当に彼女を行かせてしまってもいいのだろうか。
◇◇◇
誰かが迎えに来てくれたのかと思った。
でも、振り返って見えたのは・・・・・・今一番見たくない人間だった。
この少女は涙を流すことさえしなかった。
とはもう逢えないのに・・・・・・
もし、あの時この少女は涙を流していたら俺の中で何か変わっていたかもしれない。
でも、この少女は涙を流すことはなかった。
あの時からもう、壊れた人形と呼ばれていたから・・・・・・
「お前がを殺したんだ!!」
愛してる。
愛してる。
愛してる。
俺は今でも・・・を愛している。
だからこの少女を許せない。
「何でお前が生きてるんだよ!!」
わかってる。
この少女に思いをぶつけてもは帰ってこない。
でも、止められない。
どうしてこの少女は泣かない?
壊れた人形になったから?
感情も表さなくなったから?
でも・・・と親友じゃなかったのかよ!!
◇◇◇
「英二、見て見て!」
「にゃ?」
「ちゃん、親友なんだ☆」
「へぇー」
「可愛い子でしょ、もう氷帝のみんなベタ惚れでさーもう面白いのよ!」
「確かに可愛いけどー俺はの方が可愛いと思うにゃ!」
「ははっありがとねー英二」
◇◇◇
俺にいつも楽しそうに話してた。
本当に楽しそうに、楽しそうに・・・・・・
俺はの親友であるこの少女にヤキモチを妬いたりもしてた。
でも別に、この少女を恨んでいたわけではない。
本当にはこの少女が好きだったから、俺も好きになりたいと思った。
「なんで・・・が死ななきゃいけないんだよっ!!」
何で何も言わないんだよ!
言えよ。
自分は悪くないんだって言ってくれよ!
そうすれば・・・俺だって少しは許せるような気がするんだ・・・・・・
俺だって恨みたいわけじゃないんだよ!!
だって・・・の大切な親友だから・・・・・・
「・・・・・・っ!!」
泣いている?
今まで一度も涙を見せることのなかったこの少女が・・・・・・
ザーザーザーザー
それともこの涙は雨?
・・・・・・違う。
やっぱり涙なんだ・・・・・・
この少女は涙を見せないようにしていたんじゃないのか・・・?
俺だけには・・・
俺がの、大切な親友の恋人だから・・・・・・
† 君の涙は小さくて、小さすぎて気付かなかった †
(泣かなかったんじゃない、泣けなかったんだ。)
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