† 相手の命を奪うことは、その人の全てを奪うということ †
「あっ危ない!あのボール私がとってきてあげるからここで待っててね?」
「うん、ありがとうお姉ちゃん」
「はい、ボール投げるよー」
「!!」
目の前には車。
耳に残るのはが私の名前を呼ぶ声。
「・・・・・・あれ?無傷・・・?」
車にぶつかりそうになる瞬間、誰かに押された。
誰か・・・・・・
「女の子が轢かれたぞ!!」
ねぇ、まさか、そんなはず無いよね・・・・・・
「誰か救急車を呼べ!」
「!!」
ねぇ、嘘だといって。
どうして・・・?
どうしてが倒れてるの・・・?
私は誰かに押された。
・・・・・・に押された。
私は生きてる。
「救急車が来たぞ!」
「君、この女の子と知り合いなのか?!早く乗って!」
「・・・・・・」
「君!喋っちゃいけない!」
「無事・・・・・・?」
「!私は大丈夫、大丈夫だよ・・・・・・っ」
「そっか、よか・・・た・・・・・・」
「!!!!」
どうして動かないの?
どうして何も言ってくれないの?
どうして目を閉じてしまったの?
ねぇ、どうして・・・?
◇◇◇
「!」
「・・・・・・」
「は?!」
「・・・・・・」
「おい!!!」
「を殺したのは・・・私・・・・・・」
私が殺しました。
を私が殺しました。
◇◇◇
「・・・・・・というわけです」
「・・・俺がいない間にそんなことがあったんだね」
「あぁ」
「俺にできることがあれば喜んで協力させてもらうよ。もちろん、俺にできることがあればの話だけどね・・・・・・」
柳と柳生からという少女の話を聞いた。
「幸村くんにもさんに逢っていただきたいです」
「うん、俺も逢ってみたいな。そんな短期間で君たちの大切な存在となっている女の子とね」
大切なものを持つことのなかった彼らに初めて出来たであろう大切なもの。
それがという名の少女。
もしかすると俺にとっても大切な存在となるのかもしれない・・・・・・
大切な存在。
大切な存在。
大切な存在。
「今からのところに行くか?」
「行って大丈夫なの?」
「多分もう治療も終わっているだろう」
「じゃあ行ってみようかな、君たちの大切な女の子のところへ・・・」
◇◇◇
「どーぞ」
「切原くん、さんの様子は・・・・・・」
「今眠ってるっす」
「この子がちゃん?」
「幸村くんも来たんだー」
「うん、君たちの大切な女の子に逢ってみたかったからね」
コンコン。
「入るぞー」
「幸村も来ていたのか」
「アイツ等は?」
「帰らした」
「そっか・・・・・・サンキュ」
「・・・んっ・・・」
「あっ先輩起きた!」
「・・・・・・誰?」
「こんにちは、俺は幸村精市」
「幸村くん・・・・・・?」
「うん、そうだよ、ちゃん」
「私の名前、知ってるの・・・・・・?」
「彼らから訊いたよ、君のことはね」
「私のこと、知ってるの?」
「うん、ゴメンね」
「・・・・・・ブン太・・・私、幸村くんとふたりで話したい」
「・・・・・・わかった」
「大丈夫だよ、丸井」
「わかってるって、幸村くん信用してるぜぃ☆」
◇◇◇
「ねぇっ私のこと知ってるんでしょ?じゃああなたなら私を裁いてくれる?はやく裁いて。私がもっと罪を重ねる前に私を裁いて、裁いてよぉ・・・!!」
「ちゃん・・・・・・俺には君を裁くことなんて出来ないよ」
彼女にどんな言葉をかければいいのかはわからない。
でも、確かに彼女は悪くない。
だから誰も決してちゃんを裁くことなんて出来ない。
「君は悪くない、悪くないよ」
「違うの、悪いの、悪いのよぉ・・・!」
「悪くないよ」
優しく抱きしめてあげた。
「ちゃんは悪くないよ」
頭を撫でてあげた。
俺が出来るのはこれくらいだから。
「大丈夫だよ、君は悪くない」
彼らが大切に思っている理由がわかった。
儚く繊細な存在。
大切な存在。
「大丈夫だよ、ちゃん」
いつの間にかこの弱い存在が大切だと思えた。
俺にとっても彼女は大切な存在。
「眠っちゃったかな・・・・・・?」
腕の中で眠ってしまった少女。
夢の中ではどうか彼女を傷つけるものがないように・・・・・・
◇◇◇
「ちゃん眠っちゃった」
少ししてまた病室に入ってきた彼ら。
「どうすっか?」
「とりあえず連れて帰るけえ」
「ちょっと待てよーの家は入れないじゃん!」
「大丈夫じゃ、うちに泊めちゃる」
「それってヤバイッスよ!」
「ピヨ」
「・・・本当に大切な存在なんだね」
「当たり前だぜぃ☆」
「先輩っすからね!」
「幸村くんはどうなんだー?」
「うん、俺にとっても大切な存在かな」
「そっか、じゃあ仲良くしてやってくれよな☆」
† 相手の命を奪うことは、その人の全てを奪うということ †
(君は僕にとっても大切な存在だよ。)
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