† それは紅く †
いつもと違う時間にの墓まで来た。
跡部と俺のふたりで・・・・・・
こんな朝早くから来るんは珍しい。
だいたいは昼からや、しかも全員で来ることが多い。
でも、今日はなんとなく俺は胸騒ぎがしとった。
昨日姫さんに逢ったからやろか・・・・・・
「なんや、先客が居るみたいやな」
「あーん?」
こんな時間に先客が居るなんて珍しい。
そして・・・その先客の姿には見覚えがあった。
それはきっと跡部もやろな・・・・・・
「じゃねぇーか」
「ホンマやなーどうしよか?」
まだ姫さんは壊れた人形のままや。
壊れたままの姫さんに俺たちは逢うわけにはいかへん。
それは昨日逢ってわかった。
俺たちは姫さんを助けることはできへんかったから・・・・・・
「・・・っ!アイツ何やってんだよ!!」
そう言って隣にいた跡部は走り出した。
遠目に見える姫さんの手には刃物。
「姫さん!!」
走っていく跡部の後を追いかけた。
ただ、無我夢中に。
◇◇◇
「うーん、この問題も意味不明ー」
「姫さん、全然理解しようとしてへんやろ・・・」
「だって難しいんだもん」
「ちょっとは真面目にやれよ、俺様が付き合ってやってるんだぜ」
「嫌なら来なきゃよかったのよ、にはちゃんと私が教えてあげるし」
「、優しいー」
「限定だけどね☆」
「姫さん、俺は根気よく教えたるで!」
「本当?」
「ホンマや!」
「ありがとー」
「・・・・・・チッ俺も教えてやるよ」
「うん、景吾の教え方纏まってるから好きだよ」
「結局甘いよねーアホベも」
「おい!」
「何よ、アホベ」
「その呼び方はやめやがれ!」
「仲良しさんが多いよねー氷帝」
「「仲良しじゃない!」」
「十分仲良しだよねー侑士?」
「仲良しのはずないわ!」
「コイツと仲良くしたって俺に利益はない」
「仲良しさん、仲良しさんv良いことだと思うよ、仲良しさんv」
「姫さんが言うなら仲良しなんちゃう?」
「「・・・・・・」」
「仲良しさんに私も入れてよね」
◇◇◇
「!!」
手首に刃物を当てている姫さんの手を掴む跡部。
刃物が地面に落ちる。
姫さんの手首からは真っ赤な血が流れていた。
血。
血。
血。
「何やってんねん、姫さん!!」
姫さんの瞳に俺は映ってへん。
勿論、跡部もや。
ただ、ただ・・・の墓を見つめてる。
「忍足!ハンカチ貸せ!!」
姫さんの細い手首には跡部のハンカチが巻かれている。
でも、深く切ったのか白いハンカチは真っ赤に染まっとる。
「姫さん・・・なんでこんなことしたん?」
跡部にハンカチを渡しながら瞳に俺たちを映すことの無い姫さんに問いかける。
「姫さん?」
「のところに、逝くの・・・・・・」
「・・・死ぬつもりやったん?」
「に謝らなきゃいけないの・・・・・・」
「ここで手首を切ってものところにいけるはずねぇーだろーが!」
「どぉして・・・・・・?」
「はお前を庇って死んだんだろーが!!」
自殺した姫さんがと同じ場所にいけるはずはない。
そう言いたいねんな、跡部は。
「裁かれなきゃ、いけないのよ・・・・・・!」
「何言ってんねん、姫さんは悪ない」
「私がいけないのよ!私が・・・・・・私が・・・・・・っ」
錯乱してしもうとる姫さんを跡部が抱きしめた。
まだ小さく聞こえる姫さんの自分が悪いと言う言葉。
まるでその言葉を止めようかとするように跡部は抱きしめる手を強めとった。
俺は姫さんの頭を撫で続けてやることしかできんかった。
「俺たちはこいつを助けてやれねぇーのかよ・・・」
泣き叫んで眠ってしまった姫さんを跡部は俺に渡して歩き出した。
姫さんを抱き上げて俺もついて行く。
壊れた人形になってしまった姫さんは本当にもう俺たちに笑いかけてくれへんのやろか。
もう二度と・・・・・・
◇◇◇
「あっちゃー失敗しちゃった」
「大丈夫だって、アイツ等なら」
「そうかなぁ?」
「大丈夫大丈夫、が作ったものならなんでもいけるわよ」
「うーん・・・とりあえず渡しちゃおっか」
「そうそう、アイツ等がどんな顔するか楽しみだわー」
「あっ。ちょうどいいところに!」
「おっホント、タイミングのいい奴ら」
「姫さんとやん。どうしたん?」
「あのね・・・これっ」
「・・・なんだ、コレは」
「カップケーキよ、カップケーキ!見ればわかるでしょ!」
「なんでカップケーキが黒焦げなん?」
「失敗しちゃったの・・・ごめんね」
「なになにーちゃんの手作り?!」
「私との合同傑作よ」
「うん、ごめんね、最後の仕上げで私が失敗しちゃって・・・」
「食っていいのか?」
「おっ宍戸が珍しいー」
「俺も食う食う!」
「で、アンタたちはどうするの?」
「姫さんの手作りやったら食うに決まってるやん」
「俺も食べたEー!」
「跡部は?」
「・・・食う」
「みんな無理しちゃダメだよー」
† それは紅く †
(壊してしもてごめん・・・な。)
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