† 悲しいね、泣けないなんて、本当は誰よりも泣きたいだろうに †
「何言ってんだよ!」
誰もが沈黙になる。
もちろん、私も。
初めに声を発したのはブン太だった。
「何でが人殺しなんだよ!!」
どうしてそんなこと言うの?
知らないの?
テニス部なんでしょう?
「が人殺しのはずないだろぃ!!」
「人殺しなのよ・・・!」
関東の学校ならきっと誰でも知っていること。
上位レベルの学校なら尚更。
知らないはずがない。
「俺、意味わかんないっす」
「だから私は・・・!」
「人殺しのはずないじゃん、先輩が」
そう言って彼は私を抱きしめた。
どうして?
どうして優しくするの?
「ありえないっすよ」
ありえないことなんてないんだよ。
私は人殺し。
人殺しなの。
「赤也ずるい!」
「先手必勝っすよー」
「ガキじゃな、ふたりとも」
「「うるさい(ッス)!」」
「そういうところがガキだな」
「うむ」
どうして私に笑顔を向けるの?
どうしてそんなに優しい顔なの?
どうして・・・?
どうして・・・?
どうして・・・?
「せんぱぁーい?おーいっ見えてますかー?」
目の前で手を振られる。
手の持ち主は、切原くん。
私に笑顔を向けてくれている人。
「、大丈夫だ」
ポンポンと頭を撫でてくれるのは柳くん。
彼も笑顔。
みんな笑顔。
ここにいる人たちはみんな笑顔。
笑顔。
笑顔。
「私は笑顔を向けてもらえる資格がない・・・っ!」
そう、資格がない。
私は人殺しなの。
ダメなの、優しくされちゃ甘えてしまうから。
お願いだから優しくしないで。
「資格なんて必要ないだろぃ☆」
「そーっすよ!」
ここもあたたかい場所。
あたたかすぎる。
「ダメなの、ダメなの・・・!」
「ダメじゃない」
今度はブン太が抱きしめてくれる。
あたたかい人。
「ダメじゃないぜぃ」
あたたかい。
あたたかい。
あたたかい。
「だから・・・何があったか、話してくれ・・・」
きっと壊れる、全て。
どうせすぐに壊れるのだから・・・
壊れるなら、早い方がいい。
「わかった、話します・・・」
少しだけ、あたたかい笑顔を見れた。
それだけでも、幸せだったから。
ありがとう。
◇◇◇
「雨降って来よったな」
「あぁ・・・そうだな」
「やっぱあかんわ、雨の日は」
「なぁ・・・俺たち本当にもうあの頃には戻れないのかな・・・」
「・・・無理だな、多分」
「俺は・・・あの頃に戻りたいです」
「何で俺たちはあんなことしちゃったんだろーね」
誰もが想ってること。
全員が自分を責めている。
「後悔したってしゃーないで」
「でも、今の俺たちには後悔しか出来ねぇーよ」
「結局俺たちは大事なものをふたつも失ってしまったんですね・・・」
「・・・失ったものは大きいですね」
「戻りたいねーあの頃に」
雨は嫌いだ。
嫌なことばかり思い出させられる。
あの日も、雨だった。
「楽しかったもんなー、あの頃は!」
誰もが笑顔だった。
ここにいる奴等も、アイツ等も・・・
◇◇◇
「あれ?何やってるのー?」
「全く、アンタたちはまたサボって!」
「げっ!」
「頼む!見逃してやー!」
「ふふ、どうする?」
「決まってるでしょ?」
「「景吾(跡部)!」」
「あーん?」
「こいつらサボってたのよ」
「うん、だから景吾に密告なのー」
「俺に言っても意味ねぇーだろーが。部長に言え、部長に」
「跡部が言って来ればいいじゃん」
「俺様に指図するなんて10年早いんだよ」
「アホべが何言ってんのよ」
「なんだと?!」
「あははっふたりとも喧嘩はダメだよー?」
「またなんかやったのかよ」
「相変わらずですねー忍足さんも、向日さんも」
「亮と長太郎も相変わらず仲良しさんだねv」
「みんな、部長からのお言葉だよ、全員グランド30周だって」
「げっ!?」
「マジかよ、滝!」
「うん、マジだよ。ね、日吉?」
「はい」
「そういえばジローは?」
「どうせその辺で寝てるだろ」
「困ったねぇ・・・ジローもグランド30周なんだけど。ちなみにいない場合は俺たちがジローの分を走らなきゃいけない」
「マジかよ」
「それは困るね!ジローちゃーん!出てきてー!」
「呼んだー?」
「さすがやな、姫さん」
「グランド30周さっさと走ってきなさい!」
「走るのはふたりもだよ」
「最悪ー!」
「ありゃりゃ・・・」
「でもそんなに走れねーだろ!」
「そーやんなー姫さん1周でも息切れしてるやん」
「えっと・・・俺たちと先輩で、先輩の分を割れば・・・ひとり33周でいけますね」
「え、いいの?」
「お前に倒れられたら困るんだよ」
「そうそうー!」
「ありがとうね、みんな」
† 悲しいね、泣けないなんて、本当は誰よりも泣きたいだろうに †
(楽しかった日々、もう戻ることはできない。)
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