† 懺悔の言葉は、神には届かない †
「」
あの日から、
名前を呼ぶことを苦しく感じるようになった。
以前は何度も、何度も繰り返し呼んでいた名前。
愛しい、
愛しい、
愛おしい彼女の名前。
でも、今は・・・その名前を呼ぶことさえ躊躇ってしまう。
それはきっと、俺だけじゃない。
アイツらも。
・・・俺たちはを傷つけてしまったから。
「・・・もしもし、跡部だ」
電話の相手は真田。
は今、立海に通っている。
手続きは全て、監督が行った・・・俺たちの知らない内に。
俺たちはが立海に転校してから、その事実を知らされた。
「・・・何か用か?」
「テニス部にを知る人間はいないか?」
「?」
「おい、真田!貸せ!!・・・もしもし?!」
「・・・誰だ?」
「立海3年、丸井ブン太だ!」
・・・あぁ、ジローの奴が憧れてる奴か。
誰でもいい、
を知っていて、
・・・傷つけようとする人間でなければ誰でもいい。
「一体なんなんだよ?!はそこにいるのか?!」
「・・・あぁ、俺の車にいる」
「何やったんだよ!場合によっては絶対にゆるさねぇーからな!!!」
「・・・は今、意識を失っている。今は起こしたくない」
もしも、
今ここで目を覚ましたら俺はどうすればいいのかわからない。
恐らく、どんな反応もできない。
そして、
コイツは俺を拒絶する・・・だろう。
「・・・今どこだよ」
「立海の門の前だ」
「迎えに行く、待ってろよ!!」
「あぁ」
を迎えに来ると行った丸井は恐らく、のことを傷つけることはないだろう。
ならば、それでいい。
愛しい、
愛しい、
愛おしい存在。
だけど、今はまだ抱きしめられない。
◇◇◇
「丸井!俺も行くぜよ!」
真田に携帯を返して、走り出そうとした俺を止めたのは仁王。
の名前に反応したんだよな、きっと。
・・・それって愛じゃん。
なんて言ってられる状況じゃないから言わないけど。
俺としてはやっぱり、のことを好きな人間は多いほうが嬉しい。
当然じゃん。
ライバルが多くなっても・・・
が笑顔でいられるならそれでいいんだ。
「何があったんじゃ?」
「わかんねぇーけど、跡部といることはだけは確か。しかも、意識なんだって」
「なんじゃそりゃ」
「とりあえず門の前にいるみたいだし、話は後だ!」
「・・・わかった」
仁王との話も切り上げ、俺は全速力で走った。
大切な、
大切な、
大切な彼女の元へ。
◇◇◇
連絡はついた。
丸井ととの関係はわからない。
丸井はのことをどう思っているのだろうか?
・・・多分、俺たちと同じだろう。
いや、・・・俺たちのように歪んではいないだろう。
立海。
監督が選んだ場所。
ここでなら、はまた動き出すことができるだろうか。
少なくとも、俺たちは傷ついた壊れた人形を動かすことはできない。
人形、
人形、
壊れた人形。
それは、俺の腕の中で眠る彼女。
「・・・・・・ごめんな」
俺はまだ、
目を開かないお前に謝ることしかできない。
◇◇◇
「跡部!」
「・・・丸井か」
「おぅ」
「・・・・・・後は頼む」
「待ちんしゃい」
「・・・・・・なんだ?」
「一体何があったんじゃ?」
「俺も知らねぇーんだよ」
「「・・・・・・」」
「気になるなら山吹の千石に聞いてみやがれ」
「「・・・・・・」」
「そいつのこと頼む」
「・・・わかった」
俺から見た、跡部の目はとても切なそうじゃった。
まるで・・・
消えたものを思い出し、悲しんでいるような瞳。
一体何があった?
氷帝、
氷帝、
氷帝と彼女の間に何があった?
一体、何が・・・
「どうするんじゃ?」
「とりあえず、部室に連れて行く。目ぇ覚まさなきゃ家にもつれて帰れないし」
「・・・そうじゃな」
目を覚ましたとき、
彼女は何を思うのだろうか?
† 懺悔の言葉は、神には届かない †
(・・・ごめんな、傷つけて。)
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