† 神など幻 †
「・・・ぅ・・・ん」
「あっ起きたね。大丈夫?」
目の前に広がる明るい光。
ここはどこ?
私には似合わない明るい光。
「おーい!起きてる?」
「・・・・・・オレンジ色」
「オレンジはひどいなぁー。まぁわかるけど」
「・・・ごめんなさい」
「あっ謝んないでいいよ。俺は千石清純。君は?」
「・・・です」
「ちゃんだね」
「・・・・・・」
「・・・ごめん。本当は俺、君のこと知ってるんだ」
知ってる?
知ってる?
知ってる?
私のこと、知ってる?
「氷帝のちゃんだよね。今は立海みたいだけど」
「・・・・・・」
「何があったのかも知ってるんだ、ごめん」
謝らないで。
私の罪を裁いて。
ねぇ、お願い。
「知ってるなら・・・あなたなら私の罪、裁いてくれる・・・?」
「ちゃん・・・!」
◇◇◇
意識を失ってしまった彼女。
ちゃん。
今、俺に何ができる?
俺には彼女を家まで送ってあげることもできない。
どうしようもない。
誰かに頼るしかないんだ。
そして、今頼れるのは・・・彼しかいない。
「あっもしもし、跡部くん?俺、千石だけど今大丈夫かな?」
「あぁ」
「今さ・・・ちゃん預かってるんだ、俺の家で」
「・・・なんだと?」
「悪いんだけどさ、君たちのお姫様迎えに来てくれないかな?」
別にね、俺の家にずっといてもらっても全然構わないんだけど。
そういうわけにもいかないだろうから。
それに、きっと・・・
またちゃんは目を覚ましたら自分を責める。
「・・・わかった」
「ありがとうね」
「おい、千石。はどうしてるんだ?」
「意識を失っているよ。・・・だから、大丈夫」
「・・・わかった。今すぐ行く」
たった一言、二言だったけど、
それだけでも彼の気持ちはわかる。
彼は・・・彼らはきっと本当に彼女のことを愛している。
じゃあ、俺は?
俺はどうなのかな?
・・・それは、まだわからない。
◇◇◇
「どっか行くん?跡部」
「千石の家だ」
「千石?あぁ、山吹のか?」
「・・・あぁ」
「なんかあったん?」
「・・・・・・を迎えに行くんだよ」
「・・・姫さんなんで千石の家におんねん」
「知るか」
「・・・行って大丈夫なん?」
「今は意識を失っているらしい」
「なんやて?!」
「・・・・・・」
「姫さんもやけど・・・跡部は大丈夫なん?」
お前、自分の顔見てへんやろ。
なんとも言えん顔してるで。
姫さんは心配、やけど逢うのが怖いって顔しとる。
・・・わかるねんけどな、跡部の気持ちは。
痛いほど。
「俺様を誰だと思ってんだ?あーん?」
「強がっててもわかるで。無理しんときや」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・無理しても、それでも・・・迎えに行ってやんねぇーといけねぇーんだよ」
「・・・そやな。俺も行きたいけど、今日は我慢しとくわ」
大人数で行くべきではない。
それに、俺も行くってなったら・・・それこそ、俺たち全員で行くことになりかねん。
でも、今はそれは避けなあかん。
「悪いな」
「とりあえず、アイツらのことは任しとき」
「あぁ、頼む」
† 神など幻 †
(なぁ、姫さん。・・・いつか姫さんに面と向かって謝らせてや。)
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