† あの日に戻れるならもう笑えなくなってもいい †










「・・・、です」




突然の転入生。

今が4月ならわかる。

だが、今は5月、珍しい時期の転入生。




「少し前までは・・・氷帝にいました」




どうやら、氷帝からの転入生らしい。

氷帝か・・・そういや、テニス結構強いイメージじゃな。

王者立海には負けるが。




「よろしくお願い・・・します」




怯えるような表情に見えた。

多分、他の奴等は気づいていない。

だけど、確かにこの女は何かに怯えているような気がする。




「席はそうだな・・・仁王、手をあげろ」




どうやら、この女は俺の隣の席になるらしい。

担任もまたなぜ俺の隣にするか。

もっと、別の人間もいたんじゃなか?

まぁいいけど。




「仁王雅治じゃ。よろしく」


「・・・です。よろしくお願いします・・・」




隣に来た女の顔は・・・

どちらかといえば可愛い顔、いや、可愛い顔をしちょる。

これで、怯えるような表情じゃなけりゃいいんじゃがな・・・

どうしても、怯えた表情は消えないらしい。

なんとなう、笑った顔が見たいって思った。




「仁王!昼休みにでもに校内案内してやれ」




担任の言葉に軽く頷いておく。

まぁ拒否してもいいんじゃけど、なんとなくこの女は気になる。

だから、校内案内を受けてみるのもまた一興。




















◇◇◇




















「じゃあ、行くか?」


「え、あの・・・どこへ?」


「校内案内じゃ」


「・・・いいんですか?」


「あぁ、構わんぜよ」


「・・・ありがとう」




怯えた表情は消えない。

けど、確かに・・・笑った、控えめにだけど。

その顔に、一瞬、目を奪われた。

詐欺師といわれる俺が。




「・・・行くぜよ」


「は、はい・・・」




















◇◇◇




















?!」


「・・・ブン太?」


「やっぱじゃん!こんなトコで何やってるんだ?!」


「なんじゃ、知り合いか?」


「幼馴染・・・です」


「久しぶりじゃん!って今、氷帝じゃなかったっけ?」


はうちのクラスの転入生じゃ」


「えぇ?!いつの間にそんな展開になってんだよ!」


「・・・今日、転入してきた」


「それならそうと言えよなー!」


「ごめんね、ブン太」




丸井と話してると・・・

少し、怯えが消えたような気がする。

幼馴染っていっちょったし、安心してるんじゃろか・・・?




「謝んなって!で、家は?今どこに住んでんだよ?!」


「学校の近くのマンションで一人暮らしはじめた」


「じゃあ、今度教えろよな!遊びに行ってやるぜぃ!」


「・・・うん」


「その学校の近くのマンションってどこじゃ?」


「えっと・・・立海に一番近いベビーピンクのマンション」


「立海に一番近いベビーピンクってことは仁王と一緒じゃねぇ?」


「・・・そうなの?」


「あぁ、恐らくな」


「じゃあさ!早速今日の帰りん家寄っていい?!」


「う、うん。まだ片付けとかできてないけど・・・」


「全然いいって!部活終わるの待っててくれよな!」


「・・・うん、わかった」


「やりぃー!じゃあなー!仁王、のことシクヨロ☆」




















◇◇◇




















「仁王くんって何階に住んでるの?」


「8階じゃ」


「え・・・」


「その反応は、もか?」


「・・・うん」


「そういえば、隣空いてたような気がするんじゃが・・・」




丸井と別れてからはまた、怯えた表情になった。

・・・もしかして、俺が怖がらせてると?

そんなつもりはないんじゃけど・・・




「私、808号室です」


「俺は807号室じゃ」


「隣、ですね」


「みたいじゃな。のぉ、


「はい?」


「敬語やめて?普通に丸井に話してたみたいに話して」


「え、あ、うん。・・・わかった」










† あの日に戻れるならもう笑えなくなってもいい †

(なんか気になる存在じゃなぁーって。)



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