† お願いだから耳を塞がないで、この言葉を聞いて †
「あっ景時・・・!」
あの書状が送られてきた夜、また夢でちゃんに出逢った。
これは偶然、だろうか、それとも、必然だろうか。
「どうしたの?ちゃん」
「続き!昨日の!」
「え?」
「聞いて欲しいこと、あるんだー」
「聞いて欲しいこと?」
「うん・・・あのね、やっぱりみんなが笑ってるほうがいいよね」
「ちゃんーそれを俺に聞くの?」
「景時にだから聞くの」
「俺は・・・」
俺は今、ここでどんな言葉なら紡いでも許されるのだろうか・・・
いや、きっと、許されることなどありはしないだろう・・・
「景時」
「何、かな?」
「お願いがあるんだけど」
「・・・・・・」
「私は鎌倉に行くよ」
「うん・・・そうだろうね」
書状にもあった。
鎌倉に侵略するということが。
「それが、一人だとしても」
君の瞳は揺らがないから・・・
揺らぐことがないから。
「だからね、私を殺したらいいよ」
「え・・・?」
「殺して、私を」
「ちゃん・・・君は、何を言っているんだい?」
「あっごめん、間違った。言い方が悪かったね」
一瞬、固まってしまった俺に向けられるのは訂正の言葉。
「私を殺すふりをして欲しいの」
「殺す、ふり?」
「そう、魔弾・・・で」
魔弾・・・
俺はちゃんに見せたことがないはずだよね?
それなのに・・・なぜ、君は知っているんだい?
「私はみんなが笑ってる、そんな世界がいいの」
「そう、だね」
俺もできることならそうであって欲しいよ。
みんなが笑ってる。
それは、すごく幸せなことだろうから・・・
「だからね、私は今から景時にお願いをします」
「・・・・・・」
「あの書状と全く言ってることが違っちゃうんだけどね」
「・・・・・・」
「みんなが笑ってる未来のために・・・私に力を貸してください」
「・・・・・・」
「今は返事、いらないよ」
「・・・・・・え?」
「返事は・・・戦場で」
「戦場で返事をするの?」
「うん、お願いを聞いてくれるなら名前を呼んで、私の」
そして、ちゃんは現世に戻っていった。
きっと、話を聞いたときから・・・・・・
あの書状を受け取ったときから・・・
あの時夢で出逢った時から・・・
俺は決めていたんだろうね。
ちゃんの名前を呼ぶことを・・・
彼女の願いを叶えることを・・・・・・
† お願いだから耳を塞がないで、この言葉を聞いて †
(そして俺は、君の名を呼んだ。)
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