† 逃れられないさだめ †
「・・・銀・・・!」
「殿!?」
「様?!」
声は封じたはずだ。
だが、間違いなく銀を呼ぶ声は殿のもの。
崖から落ちていく銀の元に飛び込むのも殿。
「・・・・・・」
この崖から落ちて生きているはずもない。
万物の力。
それも同時に失ったということか・・・
「泰衡様」
「・・・どうした?」
「鎌倉が・・・」
「わかった、すぐに向かう」
今は鎌倉との戦を考えなければならない。
鎌倉に負けるわけにはいかない。
そのためには・・・白龍の逆鱗。
神子殿の力を貸していただこうか・・・
「・・・・・・殿・・・か」
あの方がいなければ九郎たちの間も纏まらぬであろう。
それが容易に想像できる。
それだけ、殿の力の全ては偉大というわけか・・・
◇◇◇
「・・・・・・どういうことだ、泰衡!!」
「言葉の通りだ、九郎」
「そんな、さんが・・・さんが死んだなんて・・・!!!」
その場に崩れるは白龍と黒龍の神子殿方。
動揺を隠せないでいる八葉の方々。
想像していた通りの出来事。
・・・・・・詰まらんな。
「・・・・・・ならば、俺は自由にさせてもらうぜ・・・」
「おい!知盛?!」
「俺の命はあの女のものだと言ったはずであろう?」
「だからってなぁ・・・」
「別にこの場に俺がいてもいなくても状況は変わらんさ・・・」
「神子殿」
「・・・・・・何、ですか?」
「逆鱗を渡していただこうか」
「・・・・・・ダメだよ。これは渡せない」
「何故?」
「これは・・・白龍から・・・私の龍から託されたものだから」
「神子・・・」
「だからあなたに渡すことは出来ない」
「ならば・・・力ずくで奪うのみだな・・・」
「止めろ、泰衡!!」
「止めるな、九郎。この逆鱗の力があれば・・・平泉は滅ぼされることはない」
「だが・・・!!」
「つまり、逆鱗の力で鎌倉を滅ぼすということですか?」
「弁慶殿、よくわかっていらっしゃる」
「さんは・・・さんは鎌倉を滅ぼすことなんて望んでない!」
そうであろうな・・・
あの方は話し合いを望むような方だ。
決して滅ぼすことなど、望まれない・・・
「だが、殿はここにはいない」
† 逃れられないさだめ †
(・・・俺が殺したようなものか。)
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