†　凍り付いた心の氷が砕けた　†










｢様、失礼します｣


｢あ、おかえりー｣


｢今すぐ、ここから出る準備を｣


｢え？｣


｢あなたはここにいてはいけない方です、桜月の君｣


｢・・・思い出したんだね｣


｢・・・はい｣


｢ごめんね、苦しませちゃったね｣


｢いえ、私は思い出さなければいけませんでした｣


｢ねぇ、思い出したこと教えて？｣


｢しかし・・・｣


｢大丈夫だよ｣


｢わかりました｣




















◇◇◇





















銀は・・・重衡は話してくれた。

昔の記憶。

平家がまだ六波羅に居を構えていた頃のこと。

南都を制圧したこと。

鎌倉方に捕らえられたこと。

忘れたいと願ったこと。




















◇◇◇





















｢苦しかったね、辛かったね・・・｣


｢様・・・｣


｢大丈夫だよ、あなたは大丈夫だよ｣




あの話だけはしてくれなかった。

北条政子が・・・荼吉尼天が宿した呪詛。

彼の呪詛は今はどうなっているのだろうか・・・

彼に心が戻るたびに、呪詛は芽吹いていく。




｢銀、大丈夫だよ｣


｢・・・・様・・・｣


｢銀？！｣




銀の身体に現れる呪詛の紋様。




｢様・・・｣




そのまま彼は意識を失った。

今、私に出来ることは彼の呪詛が少しでも弱まるように願うことだけ。

手を繋いであげることしか出来ない・・・

もしも、ゲーム通りの展開になってしまったら彼はどうなる？

崖から落ちて・・・怨霊と戦って・・・

銀はまたたくさん傷つかなくちゃいけないの？




















◇◇◇





















｢・・・・・・ん・・・｣


｢あっ起きた？｣


｢様・・・あぁ、申し訳ございません｣


｢気にしない気にしない｣


｢・・・・・・｣


｢大丈夫？｣


｢はい、様が手を繋いで下さっていたからでしょうね｣


｢まだ苦しい？｣


｢いえ、大丈夫です｣


｢そっか・・・よかったぁ｣


｢私の心配をしていてくださったのですか？｣


｢もちろん、心配だったよ、すっごく｣


｢私は・・・果報者ですね。あなたに心配していただけるとは・・・｣


｢もう、それって私が心配しない人みたいじゃん｣


｢そういう意味ではございません｣


｢ふふ、わかってるよー｣


｢・・・・・・高館へ、急ぎましょう｣


｢そうだね、急がなくちゃね｣











†　凍り付いた心の氷が砕けた　†

(確かに凍りついた私の心をあなたが溶かしてくれた。)

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