† 闇の中を走りきろうとして †
「梶原様」
「何?」
「書状が届いております」
「誰から?」
「それが・・・」
それは・・・平家の紋、だね。
ちゃんが知盛殿に書かせた文ということかな。
「貸して」
「ハッ!」
文の内容を見てみれば・・・
其処にはなんとも言えない内容が書かれていた。
しかも、知盛殿が書いたと思っていたのに・・・
書いたのはちゃんだと見て取れる内容と文面。
◇◇◇
景時へ
あのね、私もうすぐ鎌倉侵略しようと思ってるの。
あっ別に景時に協力してって言うわけじゃないんだよ。
そりゃ・・・協力してもらえる方が助かるけど。
でも、出来ない立場って言うのもわかってるし。
とりあえず、景時には言っておかなくちゃ!
って思ったからこうしてお手紙書いてみました。
鎌倉侵略の日時は決まってないけど・・・
とりあえず、問題事片付けてからだから。
まだもうちょっと先だと思う。
ちなみに、文箱は知盛にもらったの。
平家の紋入りのほうが使えるだろうからって。
本当は文自体も知盛に書かせるつもりだったんだけど・・・
面倒だって言われたの。
だから、私が書いてみました。
記念すべき初文なんだよ。
最後になっちゃうけど・・・
景時は景時だよ。
八葉の証も、黒龍の神子の兄である証も関係ない。
景時は・・・景時だよ。
みんなが景時のこと大好きなのは八葉だからじゃない、黒龍の神子の兄だからじゃない。
大切な仲間だからだよ。
◇◇◇
「・・・反則だよ、ちゃん・・・」
本当に俺はどうすればいいんだろうね。
頼朝様かちゃん。
どちらかを選ぶことも。
どちらかを裏切ることも・・・
俺には出来ないんだ。
「ちゃん・・・・・・」
「梶原様?」
「・・・あぁ、何でもないよ」
「はぁ・・・」
「全軍に告ぐ、戦の準備を」
ちゃんが鎌倉に行くというならば・・・
それを妨げたくはない。
だけど・・・ちゃんも知っているよね。
鎌倉を守る、神の存在を。
政子様・・・
荼吉尼天という名の恐ろしい神の存在を・・・
† 闇の中を走りきろうとして †
(俺は・・・君に傷ついて欲しくないんだよ。本当に、本当に・・・)
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