† 矛盾してる気持ちに戸惑う †
「御館、お声を発しないようにお願いしますね」
「あいわかった」
必ずここに来るはず。
彼の命令で御館を殺しに・・・
どんなに願ってもこの運命は変わらないように気がするから・・・
せめて、足掻いてみようと思ってみんなに内緒で一人で伽羅御所まで来た。
御館を守るために・・・
そして、ここに来る彼を止めるために・・・
「・・・ダメだよ、御館は殺させない」
見張りが変わる瞬間、彼は来る。
私はそれを知っているから・・・
だから、彼と対峙する。
私に気付いただろう彼の唖然とした顔が見える。
「・・・・・・様・・・?」
「そうだよ、銀」
「何故あなたがここにいらっしゃるのですか?」
「あなたを止めるためにだよ」
「・・・・・・」
「泰衡の命令できたんだよね、御館を亡き者にするために」
「・・・はい」
「そうか・・・殿、ひとつ宜しいか?」
「はい、何でしょう?」
「時にこの場合はどうしたものか」
「そうですね・・・泰衡が欲しいのは御館の立場でしょうね」
「助言、感謝致す」
「いえ・・・」
「御前、失礼致します」
「待って、銀」
「・・・はい」
「私も連れて行って、泰衡の所へ」
「それは・・・出来ません」
「泰衡と話しなくちゃいけないの」
彼は大社を建設した。
全ては・・・鎌倉と荼吉尼天と戦うために・・・
「・・・・・・」
「御館、泰衡に立場をお譲りするおつもりでしょう?」
「うむ、仕方があるまい」
「そのことを伝えるお役目、私にいただけませんか?」
私を連れてはいけないという銀。
それならば行かなくちゃいけない正当な理由を手に入れる。
特にこのお役目なら・・・銀も無碍には出来ないだろうから・・・
「よろしく頼む、殿」
「銀、わかるでしょ?私は泰衡に逢わなくちゃいけない」
「・・・わかりました、お連れいたします」
「ありがとう。では御館、失礼します」
泰衡を止められるかはわからない。
だって・・・彼には彼の意思が、思惑がある。
でも・・・できることなら止めたい。
あの人も哀しい運命の上にいる人だから・・・・・・
† 矛盾してる気持ちに戸惑う †
(本当はこの運命が起こらないようにしたかったんだけどなぁ。)
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