†　月だけが輝いていた　†










｢銀｣


｢泰衡様、何用でしょうか？｣


｢殿は・・・お前から見てどのような方だ？｣


｢様は・・・桜を照らす月のような存在です｣


｢桜を照らす月・・・か｣


｢はい、月のように輝かしいお方でございます｣


｢・・・なるほどな｣


｢泰衡様、何故私にそのようなことをお聞きになるのですか？｣


｢・・・単なる戯れさ｣


｢・・・・・・｣


｢今後も神子殿と共に監視せよ｣


｢はっ、畏まりました｣




泰衡様は・・・やはり様のことを想っていらっしゃるのでしょうか・・・

あの方を想う方は多い。

それでも・・・あの方を想ってしまう自分がいる。

許されない想いだと知っているのに・・・・・・




















◇◇◇




















｢・・・重衡・・・か｣




今は銀と名乗る男。

呪詛の種だとかは言っていたな・・・




｢この平泉を穢す呪詛か・・・｣




あの女が・・・が重衡を殺すとは思えない。

甘すぎる女。

俺を殺さなかった女だからな・・・




｢だが、俺は甘くない｣




相手が誰であれ斬ることはできる。

この手で・・・

この手を血に染めようとも厭わない。




｢・・・何やってるんだよ、知盛｣


｢重盛兄上・・・か｣


｢誰が甘くないって？｣


｢・・・俺だが、何か？｣


｢・・・どこがだよ｣


｢どういう意味だ・・・？｣


｢お前、には甘すぎだろ｣


｢・・・甘いだと・・・？｣




俺が・・・か？

意味がわからん・・・




｢あぁ、甘いな。カナリ｣


｢・・・意味がわからん｣


｢無自覚かよ・・・｣


｢俺は誰に対しても甘いつもりはないぜ？｣


｢はぁーまぁそれでもいいけどさ｣


｢有川はどうなんだ？｣


｢に対して甘いって話か？｣


｢あぁ｣


｢どうだろうなー？まぁ適度に甘いんじゃねぇ？｣


｢適度・・・か｣


｢あの瞳には負けるしな｣


｢・・・それはわかるな・・・｣




あの女の瞳は心地良い。

殺気立っているわけではないが・・・

心地良さを感じさせられる。




｢って言うか、甘い奴ら多すぎだろ？｣


｢・・・そうだな｣




別当殿、軍師殿、九郎義経、敦盛も・・・か。

奴らも相当甘い。

恐らく・・・の願いなら叶えるだろう、どのようなことであっても。




｢この世を征服するのも夢じゃないんじゃねぇ？｣


｢あの女が治める世界か・・・｣




クッ・・・それは些か楽しめそうな世界だな・・・

最も、あの女は血を流す戦は好まない。

だが・・・あの瞳は彼岸を見てきたものの瞳。

全く、よくわからん女だ。




｢言ってみるか？に｣


｢この世を征服か？｣


｢あぁ、結構面白い事になるかもしれないぜ？｣


｢・・・確かにそうかもしれんな・・・｣




またひとつ、面白いことが起こるかもな・・・

有川がこの世を征服することを持ち出して、その瞬間のの顔を見るのもまた一興・・・




















◇◇◇





















｢なぁ、｣


｢あっお帰りー。知盛、将臣と一緒だったんだー｣


｢あぁ・・・まぁな｣


｢世界征服しねぇ？｣


｢はぁ？世界征服ってつまり・・・この世界を征服？｣


｢そうだ、なかなか楽しそうじゃねぇ？｣


｢あはは・・・将臣が本気ならまぁ頑張れ。応援だけはしてあげる｣


｢クッ・・・つれないな｣


｢何？知盛もしたいの？｣


｢別・・・に。ただ、お前が治める世なら楽しめそうだがな｣










†　月だけが輝いていた　†

(桜月の君・・・か、我が弟ながらよく名づけたものだな。)

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