† 帰り道を一緒に †
「・・・・・・これって・・・」
泰衡が読んだという書物の山。
その中でひとつ気になるものを見つけた。
「如何致しましたか?様」
「これ」
「・・・なんだ?」
「万物の姫、だって」
万物の姫。
聞き覚えのある言葉。
私のことをそう呼んだ存在があった。
そして・・・この書物に書かれていること。
「それがどうした?」
「・・・これ、私なの」
「・・・どういう意味でしょうか」
「ん?そのまま。私が万物の姫なの、この書物に書かれてる万物の姫」
「「万物の姫・・・」」
「うわぁ・・・知盛と銀見事にハモってる」
流石兄弟。
これで協力技とかあったら最高に素敵だねぇ・・・
将臣も合わせて平家三兄弟で!
「ほらこれ見て」
「万物の力を持つ姫。全てのものを天に返す力を持つ・・・か」
「そう、知盛も見たでしょ?私が怨霊浄化したの」
「あぁ・・・院の傍にいたあの怨霊か」
「そう」
「しかし泰衡様がご覧になられた書物にどうして・・・」
「捜していたのではないか?泰衡が万物の姫という存在を」
「・・・・・・」
万物の姫の力は白龍の逆鱗に匹敵する力があるのかな・・・?
そうであるなら、望美ちゃんは傷つかなくていい。
白龍の逆鱗を使って泰衡は・・・
「銀、まだ秘密にしておいてくれる?」
「泰衡様に万物の姫の・・・様のことをですか?」
「そう、まだ内緒にしてて?」
「・・・・・・」
やっぱり無理かな?
銀の主は泰衡だもんねぇ・・・
泰衡が捜していたものを見つけて報告しないわけにはいかない。
「・・・わかりました」
「え?」
「泰衡様にはお話いたしません」
「・・・いいの?」
「はい、様が望んだことですから」
「・・・ありがと」
いいのかな・・・?
でも、今はその銀の答えに甘えさせてください。
「さて、そろそろ帰ろうか?」
「・・・先に帰っていろ」
「ん?知盛?」
「少し・・・寄るところがあるからな」
「そっか・・・わかったじゃあ先に帰るね?」
「あぁ・・・」
「では様、高館までお送りいたします」
「うん、お願いねー。あっ知盛、大丈夫だと思うけど気をつけてね?」
「・・・あぁ」
◇◇◇
「送ってくれてありがとうね、銀」
「はい・・・」
「どうしたの?」
「・・・・・・」
「こら!もうー眉間にしわ寄せちゃって・・・本当に知盛とそっくりなんだから」
「・・・・・・」
「そんな顔してる奴にはこうしてやる!!」
必殺、頬抓り。
あーやっぱり綺麗な顔が歪む。
なんか知盛の頬抓ったときのこと思い出すなぁ・・・
「・・・様」
「ん?」
「痛いです」
「・・・素直だね」
「離していただけますか?」
「どうしようかなぁー?・・・なんてね、うそうそ離すよ、ごめんね?」
「いえ・・・」
「やっぱり・・・あなたは人間だよ、ちゃんと人間だよ」
「様?」
「大丈夫だよ、あなたはちゃんと綺麗だから」
魂に呪詛が刻まれているとしても・・・
あなたの心はやっぱり綺麗なものなんだよ。
「綺麗なのは・・・あなたです」
「え?」
「様、あなたは誰よりも美しい」
「違うよ、私は美しくない。欲深いの。だから・・・綺麗じゃないよ」
私はただ、みんなが幸せになる道を見つけたいと思っている。
みんなという点でカナリ欲深いよね。
自分でもわかってる。
でも・・・この想いは止めれないから。
止めるつもりもないから・・・
「そろそろ帰らないと遅くなっちゃうね」
「・・・はい」
「また明日ね、銀」
「・・・はい、また明日参ります」
「大丈夫と思うけど・・・気をつけて帰ってね」
「ありがとうございます」
† 帰り道を一緒に †
(私は後悔だけはしたくないから。)
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