† お前だけだよ、俺をここまで本気にさせるのは †










「クッ・・・来たな」


「うん、当たり前でしょ?」




熊野でちゃんと予告していたし。

私が知盛から剣を教えてもらったのも全て・・・

今日、この日のため。




「お前の剣技、楽しみにしてるぜ」


「・・・自分が教えたくせに」


「だが、お前の剣を見せてくれるのであろう?」


「当然、私は知盛じゃないから知盛の剣なんて絶対に出来ないもん」




知盛は昔から剣を握っていたはず。

戦乱の世の中になる前・・・

六波羅にいるときからずっと、ずっと・・・

だから、たかが数日で剣の型だけを覚えた私には到底敵うはずもない。




「・・・・・・」


「ねぇ、みんなもこの宴に入ってもいいの?」




あえて宴と言ってみる。

だって・・・知盛にとってこれは宴。

最後の・・・宴。




「あぁ・・・別にいいぜ」


「あっでも、二人で剣を交えてみたい気もするなぁ・・・」




二人で、何てカナリ無謀なこと言っているような気もする。

でも、知盛を一番近くに感じれるのはきっと・・・

直接、一人で知盛を相手に剣を交えることだけだから・・・




「どちらでも構わないさ・・・お前と剣を交えれるのであればな」


「・・・じゃあ、二人でにしようか」


「あぁ・・・お前の剣を・・・お前を感じさせてくれ」


「後悔しても知らないよ?」


「クッ・・・後悔させてみろよ・・・」


「よし、決定!ということだから・・・みんな手出し無用だからねー」


「え?!さん?!」




とりあえず、驚いている様子の望美ちゃん。

うん、確かにそうだよね。

結局は知盛が退いて生田は終了だったらしい。

だからこそ、今度はみんなでって思ってたんだよね・・・きっと。




「お前に知盛殿の相手は無理だ」


「無理だなんて勝手に決め付けないでよ」




私のお師匠様は知盛なのよ!!

・・・なんて言おうとは思わないけど。

最も、九郎の言うとおり無理だということもわかる。




さん、相当自信があるようですね」


「自信?そんなのないよー」




知盛と私だったら全てにおいて知盛が上。

この男には色仕掛けなんて芸当も通じないし・・・




「ふふ、でもお前に負けは似合わないよ」


「うん、私負けず嫌いだもん」


さん、危険すぎるわ・・・」


「大丈夫だよー朔。みんなー手出ししちゃダメだよー」




みんなで戦ったらきっとすぐに終わってしまう。

知盛のこの、楽しい宴は。

だからこそ、誰にも手出しはさせない。




「さてと、知盛ー始めようか?」


「あぁ・・・最高に楽しめそうな宴だな」


「後悔するほど楽しませてあげる」


「やはり・・・いい瞳だ」


「そんなこと言ってるなんて余裕ね」




本当に余裕過ぎる。

だって・・・笑ってるし。

相手が私だから?

自分が剣技を教えた相手だから?




「余裕・・・そんなものはないさ」


「嘘つき」




嘘つきだね、本当に。

何回も何回も知盛見てきたけど・・・

私を今、相手にしてるのにいつもと変わらない。




「本当さ・・・お前の剣に・・・お前自身に麻痺されている気分だ」


「気分だけでしょー?ったぁぁ!!」




隙あらば攻めるのみ。

知盛相手には思いっきり攻めるしかない。

技術、時間は到底敵わないなら・・・攻めるしかないもん。




「クッ・・・やってくれるじゃないか」


「当然、隙は見せちゃダメでしょ?」




例え相手が弟子でもね。

いつ下剋上されるかなんてわからない。

あっでも、下剋上ってもうちょっとあとの話か・・・

ここは源平合戦の最中のような異世界だけど。




「・・・終わりだな」


「え?!」


「俺の負けさ・・・


「ちょ、ちょっと!まだ勝負はついてないでしょ!」




逃げる気・・・?!

ここで逃げる気なの・・・?




「もうついているさ・・・平家の運命もな・・・」


「・・・まだだよ」


「・・・なんだと?」


「まだ勝負は決まってないし、平家の運命も・・・知盛、あなたの運命もまだ決まってない」


「・・・・・・」


「知ってるよ、これからあなたがこの海に身を投げようとしていること」


「・・・・・・」


「でも、私はそれをさせてあげない。死ぬくらいなら生きなさい」


「クッ・・・可笑しな女だな」


「可笑しな女で結構」


「・・・いいぜ、俺の命お前にやる」


「え?」


「俺は・・・お前のものだ」


「・・・知盛は知盛のもの。でも・・・くれるならもらう、あなたが自ら命を捨てたりしないなら・・・それでいい」


「交渉成立だな」


「みんなーこっちは終わったっぽいー」


「何だと?!」


「結果は私の勝ち、よって知盛の命は私のもの。だから一緒に行動するから」


「しかし・・・!!」


「九郎様、鎌倉殿が還内府の襲撃にあっております」


「本当か?!」


「はい!」


「・・・全軍、兄上の救援に向かう!・・・、話はその後だ」


「・・・いいよ、それでも」




最も、この後その余裕が待っているとは思わないけど・・・










† お前だけだよ、俺をここまで本気にさせるのは †

(この先に待つのは悲しい運命。)



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