† その旋律に名はない †










「そこのお嬢さん、舞は得意かね?」


「へ?あっ得意じゃないですー」


「そうか・・・残念じゃ」




あっ・・・!!

そ、そんなに哀しそうな顔しないで下さいよー!!




「私、舞いできる人知ってます!!」




そりゃもう超一流の人!!

私に舞を教えてくれた張本人!!

怒るだろうなぁ・・・っていうか不機嫌になるだろうなぁ。




「ほう・・・その方は何処に?」


「えっと・・・あっいた!とも・・・」




あっダメだぁ・・・名前呼んじゃまずいよね?

実は知盛有名人だし。




「そこのチモ!チモリ!ちょっと来なさーい!!!」




この呼び名しか思いつきませんでした。

所謂、カタカナ呼び?




「・・・・・・」


「無視するなぁー!!!」




完璧無視されました。

そうだよね・・・チモとかチモリじゃ伝わらないよね・・・

っていうか!振り向いたんだから来てくれてもいいじゃない!!




「あの殿方が舞手かのう?」


「そうです、とってもお上手ですよ!!」




もうこうなったら走って捕まえるしかない!!




「ちょっと待ってて下さいね、今捕まえてきますから」




















◇◇◇





















「知盛、どうして来てくれないわけー?!」


「・・・・・・呼ばれた覚えがないが?」


「呼んだじゃない!!チモとか、チモリとか!!」


「・・・なんだ、それは」


「知盛のカタカナ呼び」


「・・・・・・」


「とりあえず、来て」


「何故だ?」


「あそこにいるお爺さんがね、舞を舞って欲しいんだってー」


「・・・面倒だ」


「えぇーだってあのお爺さん哀しそうな顔してたんだよー」


「俺には関係ない」


「・・・・・・舞手連れて行くって言っちゃったのに!!」


「それはお前が勝手にしたことだろう?」


「・・・・・・」




困った・・・非常に困った。

約束したからには破るわけにはいかない。

でも、他に舞手なんて知らないよー!!!




「クッ・・・そんな顔するなよな・・・いいぜ、お前が共に舞うなら舞ってやるさ・・・」


「本当?!っていうか私も舞うの!?」


「あぁ・・・交換条件だ」


「でも、私・・・舞えないよ」


「俺が手取り足取り教えてやったはずだが・・・?」


「うぅ・・・そりゃ、形には大分なったよでも・・・ねぇ?」




知盛と一緒に舞うなんて到底できません。

実力の差が・・・!!!




「お前がそういうならば止めるだけさ・・・あのご老人には気の毒だがな」


「・・・わかったわよ!舞ってやろうじゃない!!!」


「決まったな・・・」


「その代わり、フォローしてもらうからね」


「ふぉろーとは何だ?」


「要は、助けてよね」


「気が向いたらな・・・」


「・・・とりあえず、行こう?」


「あぁ・・・」




いざとなったら知盛も助けてくれるよね・・・?

だって、あの時も助けてくれたんだし・・・

まぁ相手はゲームでは私じゃなくて望美ちゃんだけど。




















◇◇◇




















「なーにやってんだよ、お前ら」


「あっ将臣ー」


「・・・・・・」


「今から知盛に無理やり舞わせるところなの」


「ははっ・・・弱いな、知盛」


「煩い、重盛兄上」




声が聞こえる方向に来てみれば見事な舞台の上にいる見知った二人の姿。

不機嫌な知盛と上機嫌な




「とりあえず、練習の成果を試す時だからしっかり観ててよー!」




っていうか、二人で舞うんだな・・・

福原で舞なんて観る機会はいくらでもあったけど・・・

知盛が舞ってる姿は初めてで・・・

尚且つ、そこにが舞うと来たら・・・観ないわけにはいかないだろう。




「まぁ頑張れよ」




















◇◇◇





















「見事な舞でした、あなた様はもしや・・・」


「この席に名など必要ないでしょう、ご老人」


「・・・そうでございますね」


「チモーチモリーもうひとさしー」


「なぁ・・・チモリってなんだよ」


「ん?カタカナ呼び」


「あーなるほど」




なりの考慮というわけか・・・

コイツ、こういうことにはカナリ頭回るんだよな。




「もうひとさしー」


「・・・・・・面倒だ」


「いいじゃないー舞ってよー」


「・・・我侭な姫君だな」


「悪い?」


「クッ・・・それなりに見返りを求めさせていただいても宜しいのでしょうか?」


「見返りー?うーん・・・あとで考えるー」


「期待していますよ、姫君」




・・・・・・知盛の貴族っぽい口調・・・

遊んでやがる、あいつ等・・・

っていうか・・・知盛がのことを姫君呼びしている時点で背筋が寒くなるのは俺だけか?!




「じゃあ舞ってくれるんだ?」


「あぁ・・・お前が所望だからな」


「やった!」




なんていうか・・・俺たちも相当呑気なんだよな、きっと。

本当は急いで本宮に行って・・・熊野水軍の協力を仰がなくてはいけないはずなのに・・・

まぁ熊野川が氾濫してるし、院に怨霊がついてるから仕方ないか・・・

それに、この心地良い時間を俺は・・・俺たちは求めてしまっているから・・・




「将臣眉間の皺ー」


「・・・悪い」


「別にいいよー」


「・・・・・・なぁ」


「ん?」


「やっぱ・・・何でもない」


「何それー」




言っても仕方がないこと。

ここでに問えば、それなりの答えも返ってくるだろう。

でも・・・俺はそれに縋りたくないと思った。




「将臣、まだ大丈夫だよ」


「・・・そっか」




でも結局はコイツは全てを見越しているようで・・・

最後には縋りついてしまう自分がいる。

もちろん、そんな様子は微塵も見せるつもりもないけど。

それでも・・・その言葉一つで十分なんだ・・・




「さー知盛の舞観なくちゃ」


「そうだなー」










† その旋律に名はない †

(てか、マジ貴族様ってすげぇーな。)



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