† 運命は、変えるためにあるのだと思う †
「そろそろ出てきてもいいんじゃない?」
「え?」
「叔父上殿」
「気付いていましたか」
「アンタは俺の隠れ家を知っているからね」
「弁慶?!」
うわぁ・・・本当に弁慶だ。
っていうか、全く気付かなかったよ・・・!!
「すみません、さん」
「あーうん、別にいいよ」
聞かれて拙い話でもなかったような気がするし・・・
それに、弁慶に聞かれるのならまだマシだし。
ヒノエの正体も全部知ってるから。
「で、アンタはどのあたりから聞いてたわけ?」
「最初から、ですね」
「はいはい!弁慶質問です!」
「何でしょう?」
「私ってば謀反になっちゃう?」
だって・・・頼朝は熊野の協力を望んでいる。
でも、私は熊野の協力をとりあえずは望まなかった。
つまり・・・頼朝の命に逆らったことになる?!
「ふふ、大丈夫ですよ」
「本当?」
「えぇ、僕が君を危険な目に遭わせるわけがないでしょう?」
「アンタの存在自体が危険だと思うけどね」
「言いますね・・・ヒノエ」
「自覚はしてるだろ?」
「ふふ・・・そうですね」
熊野の男は危険だ・・・!!
っていうか、危険なのは弁慶とヒノエだけだと思うけど・・・
敦盛は危険っぽくないし。
そういえば・・・忠度さんも熊野出身だっけ・・・
「アンタは熊野は源氏に与すると思っていたのかい?」
「さんの願いなら・・・協力すると思っていましたが」
「何だ、わかってるじゃん」
「さんをどこかに閉じ込めて熊野に協力していただくのもまた道ですね」
「・・・マジ?」
「本気・・・だと言えばどうしますか?」
「とりあえず、逃げる」
逃げるが勝ち。
弁慶ならやりかねないから怖い・・・!!
「どこへ逃げるというのです?」
「うーん・・・じゃあ福原」
「なるほど・・・君が福原に行けばまた状況が変わるでしょうね」
「そうだよーきっと源氏は負けるよ」
私が今の状況を全部ひっくり返すことが出来る自信なんてないけど・・・
でも、何とかなるかもしれないじゃない?
私はこの先の運命も、歴史も知ってるんだから・・・少しくらいは協力も出来る。
それに・・・平家も強いからね、強い将がまだたくさんいる。
「そこまで言われては君をどこかに閉じ込めるなんてことは出来ませんね」
「そうそう、そんなことしないほうがいいよー」
「まぁ、姫君をアンタが捕まえた時点で熊野は源氏の敵になるからね」
「おやおや、それは困りましたね」
弁慶・・・全然困ってるようには聞こえないんですけど!
むしろ、なんだか楽しそう。
そうだよねー軍師様だもんね。
この状況でどう、戦況を変えるかを考えるのが軍師様だもんね!
「熊野と平家が手を組んだら・・・平家の勝ちなのはほぼ確定?」
「そうでしょうね」
「でも、平家が勝ったら・・・九郎たちは困っちゃうんだよね」
源氏と平家の戦い。
それは・・・私みたいな一般人が考えるほど甘くはない。
もっと、もっと・・・内部でドロドロしてる。
もっとも、そのドロドロは主に源氏なんだろうけど。
平家は平家で色々大変だろうけど、とりあえず・・・まとまってるもんね、しっかりと。
でも、平家は・・・
「あーあ、難しいなぁーホントに」
みんなが幸せな世界、運命。
誰もが悲しくない運命なんてそんなの、難しい。
わかってる。
でも、成し遂げたい。
「ねぇ、二人とも」
「何かな?」
「なんですか?」
「私、悪足掻きとか大好きだから・・・私が溺れそうになってたら助けてよね」
† 運命は、変えるためにあるのだと思う †
(絶対に掴んでやる。誰もが幸せな運命を!)
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