†　ダイヤモンドよりも輝く太陽　†










｢やっぱり熊野の空気は美味しいー｣


｢お前のお気に召したなら嬉しいよ｣


｢折角だし、ヒノエー案内してー｣


｢ふふ、姫君のお心のままに｣


｢じゃあ決定！ちょっと散策してくるねー｣




















◇◇◇





















｢さて、姫君。どうして俺をご指名かな？｣


｢え？だってー熊野別当に案内してもらうなんて滅多に出来ない経験だし？｣


｢まぁ・・・そうだろうね｣




俺が案内なんて滅多にしない。

風のように自由に生きているからね。




｢さっ、湛増さん熊野の案内して下さい？｣


｢ねぇ・・・その名で呼ぶのは止めてくれない？｣


｢ダメ？｣


｢ダメ｣


｢わかったーじゃあヒノエー。案内よろしくー｣


｢あぁ・・・どこか行きたいところはあるかい？｣


｢うーん・・・静かで、人もいなくて熊野の烏さんもいないようなところ｣


｢・・・・・・何か深刻な話でもするつもりかな？｣


｢うん！とっても深刻な話をねー｣




が言うとまるで明るく楽しい話のように思えるけど・・・

実際のところ、この姫君は相当のやり手だから・・・

まだ沢山のものを隠しているだろうね。




｢じゃあ俺の秘密の隠れ家に行こうか｣


｢わぁー秘密の隠れ家なんて響きが素敵だねー｣


｢では、お手をどうぞ・・・｣


｢はーい｣




















◇◇◇





















｢・・・・・・何かいかにも秘密の隠れ家だねぇ・・・｣




ヒノエに案内されたのは所謂秘密基地。

本当にまるで森の中にあるような秘密基地で・・・

ちょっとびっくり。




｢お気に召さないかな？｣


｢ううんー意外性があってびっくりしたから大丈夫！｣




熊野別当のヒノエだし・・・もっと高級感漂うようなすごいお邸かと思ってた・・・

でも、お話をするならこういうところのほうが雰囲気が出てＯＫだよねー。




｢で、話って何かな？｣


｢熊野はどうするつもりですか？｣


｢・・・何を？｣


｢しらばっくれるなー！｣


｢ふふ、わかってるよ・・・源氏か平家か中立か・・・だろ？｣


｢そう、どれ？｣


｢今のところは中立・・・かな｣


｢だよねーやっぱり｣


｢お前はどうして欲しいのかな？｣


｢私？｣


｢そう、姫君の願いを聞きたいな｣


｢私の願いかぁ・・・｣



さて、どうしよう。

熊野が源氏に協力するなら源氏が勝つ。

同様に、平家に協力するなら平家が勝つ。

だって最終決戦は壇ノ浦。

強い水軍を持っているほうが勝つ確率が高い。




















◇◇◇




















さぁ、・・・お前はどうする？

お前の答えを俺に聞かせて・・・

その答え次第で熊野がどう動くかが決まるといっても過言ではないよ。




｢私は、源氏じゃない｣


｢あぁ・・・そうだね。俺も源氏じゃないよ｣


｢でも、私がいるのは源氏の軍｣


｢・・・・・・｣


｢できれば・・・熊野には中立でいて欲しいかな｣




意外だった、の答えが。

てっきり熊野に協力を仰ぐかと思っていたから・・・

それなのに、が紡ぐ言の葉は中立という言葉。




｢それは何故？｣


｢うーん・・・私のためかな｣


｢・・・・・・｣


｢自分勝手な考えだと思うよ。源氏は熊野に協力を仰ぎに来たはずなのにね・・・｣


｢お前は源氏が好きかい？｣


｢うん、好きだよ。あっでも・・・頼朝は嫌い、政子さんも嫌い｣


｢ふふ、お前は怖い女だね｣




源氏の棟梁の源頼朝とその妻北条政子。

その二人を嫌いと言いのける。

本当に怖い女だよ。




｢じゃあ平家は好きかい？｣


｢うん、好きだよ｣


｢・・・お前は平家と関わりがあるのかな？｣


｢あるといえばあるね｣


｢へぇ・・・｣


｢さて、熊野別当さん、あなたの答えをお聞かせいただけますか？｣


｢そうだね・・・お前が中立を望むなら・・・中立としようか｣


｢・・・ありがと｣




もし、この姫君が熊野の協力を望めば・・・

きっと俺は協力すると言っていただろうね。




｢熊野の答えは出たけど・・・これからどうするつもりだい？｣


｢本宮に行きたいとは思っているんだけど・・・通れそう？｣


｢烏の報告では熊野川が氾濫しているようだよ｣


｢やっぱり・・・｣


｢ご存知だったのかな、お前は｣


｢うん、一応ね｣


｢どうする？｣


｢とりあえず熊野川行く｣


｢｣


｢なぁに？｣


｢もし・・・もし、熊野の協力が必要になったらいつでも言うんだよ｣


｢え？｣


｢俺はお前の願いなら何でも叶えてやるからさ｣




だからお前の願いを言ってごらん。

これが俺の運命。

俺の運命をお前にあげるよ。




｢・・・ありがと、ヒノエ。でも・・・本当にお願いしちゃうかもしれないよ？｣


｢ふふ、任せてくれよ｣


｢じゃあ・・・その時が来たら・・・ね？｣










†　ダイヤモンドよりも輝く太陽　†

(いつでも俺はお前の味方だよ、俺の戦女神様。)

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