† いらっしゃいませ、お待ちしておりました †










「祇園精舎の鐘の声」




祇園精舎の無常堂の鐘の音は




「諸行無常の響きあり」




諸行無常、万物は刻々と変化していくものの響きがある



  
「沙羅双樹の花の色」




釈迦入滅の時に白色に変ったという沙羅双樹の花の色は




「盛者必衰の理をあらわす」




盛んな者もいつか必ず衰えるという道理をあらわしている




「驕れる者も久しからず」




権勢を誇っている人も、永久には続かない




「ただ春の夜の夢の如し」




それは春の夜の夢のようなものだ




「猛き人もついに滅びぬ」



勇猛な者も最後には滅びてしまう




「ひとへに風の前の塵に同じ」




それは全く風の前の塵と同じだ




「ほう・・・それは呪いの言葉か?」




部屋に通されて、頭を下げることもなく頭に覚えている言の葉を紡ぐ。

実は私って礼儀知らず?

でも・・・これくらい強気で行かなきゃ負けちゃいそうだし。

ここで負けたら女が廃る!!




「まさか」




平家物語だし。

ここで頼朝に呪いの言葉でも言ったならそれこそ・・・殺されるでしょう?

殺されたくないもん。




「これは私の知る平家の行く末です」




もちろんこれは現実に起こるとは限らない。




「最も、こうなるとは限りませんけどね?」




だって・・・私がいるもの。

運命を変えるほどの偉大な力は持っていない私でも・・・

知っている歴史なら変えられるかもしれないでしょう?

将臣がしているように・・・




「ふふ、可笑しなお嬢さんね」




わぁー北条政子初めて喋ったー。

やっぱり怖いよ、この人。

流石・・・荼吉尼天が降りてるだけのことはあるね・・・




「娘、雨を呼んだそうだな?」


「はい」


「娘、名を申せ」


「人に名前を尋ねるときは自分からですよ?」


「気の強い娘であるな・・・」


「あら、あなた。面白いお嬢さんではありませんか」




・・・・・・実は政子さんにフォローされてたりする?

私のこの態度って実は・・・ザクッと斬られちゃってもおかしくないんだよね・・・きっと。




「我が名は源頼朝だ」


「私はです」




よし、ここはちゃんと名乗ってみよう。

彼もちゃんと名乗ってくれたしね。




「もう下がって良い」


「つまり・・・帰ってもいいということですよね?」


「あぁ、そうだ」


「じゃあさようなら」




















◇◇◇




















「あ、一ついい忘れた」


「えっちゃん?!」


「この距離ならまだ戻ってもいいよね?」


「えぇ?!」




なんて言ってちゃんは走り出した、

頼朝様の部屋に向かって一直進。




「すみません、お邪魔します!頼朝さん、最後にひとつ・・・運命はどうなるかわかりませんよ」




なんて不敵な笑顔で頼朝様に告げるちゃん。

さっきから俺はハラハラしまくりなんだけど・・・ちゃんの言動に。

だって、いきなり襖開けたし!




「本当に面白いお嬢さんね」




政子様もちゃんを特に咎めることもなく、俺たちは頼朝様の部屋を出た。

頼朝様の部屋から出た時のちゃんの言葉は・・・




「あーびっくりした」




なんていう、ちゃんらしい言葉だった。




ちゃんーそれ俺のセリフだよー」


「もういつ斬られるんじゃないかってドキドキだよー」


「それも俺のセリフだよー」




しかもあの頼朝様に名前まで名乗らせちゃうなんて・・・

本当にありえないよ・・・ちゃん。




「さぁーて!もう用事も済んだし帰ろうー」


「そうだね、折角だし何かお土産でも買って行こうか?」


「うん!賛成ー!」




こんなにあっさり頼朝様がちゃんを帰してくれるなんてことも・・・

正直、思ってもいなかった。

ちゃんは雨を降らせた・・・後白河法皇様の前で。

それだけじゃない平家が火で責めてくることを予測し、兵士を無駄にすることがなかった。

平知盛殿と話し合いまでしちゃってたしね。




「何がいいかなー?」




でも、この笑顔を見ていると・・・

何かやっぱり救われる気がする。

俺のことを知っても、俺がどんな風に生きてきたかも知っていても・・・

変わらない笑顔を向けてくれる。




「あっこれ可愛い!!望美ちゃんと朔ちゃんにぴったり」


「望美ちゃんと朔にはそれで決定?」


「うん!二人は対だもん、お揃いがいいでしょ?」




ちゃんが選んだのはふたつの装飾品。

色取り取りに並べられている中で選んだ望美ちゃんと朔にぴったりのもの。




「あれ?ちゃんの分は?」


「え?」


ちゃんもお揃いにしたら望美ちゃんと朔も喜ぶと思うよ」


「で、でも・・・私はお留守番じゃないし・・・」


「いいの!いいの!俺が買ってあげるからさ、ね?あっもちろん二人の分も俺が買ってあげるよ」


「・・・ありがとう!すごく嬉しい!」


ちゃんが喜んでくれて俺も嬉しいよ」










† いらっしゃいませ、お待ちしておりました †

(やっぱり君には笑顔が似合うから、俺は君の笑顔を曇らせたくないよ・・・・・・)



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