† 勇気とは、ただ力が強いだけのことではない †











「はぁ・・・」


「どうしました?」


「あっ弁慶ー」


「何か思い悩んでいるようですが・・・」


「だって・・・九郎が一緒に連れて行ってくれないって言うんだもん!!」


「・・・・・・」




確かこの間、さんも一緒に戦場に行くと言い出して・・・

九郎がそれを制している姿がありましたね。




「私だって一緒に行きたいのに・・・!!」




九郎の気持ちがわからないこともない。

ただ・・・彼女を傷つけたくないだけ。

神子としての力を持つ望美さんや朔殿ならまだしも・・・

さんには少々危険でしょうからね。




「どうして・・・一緒に行きたいんですか?」


「私だってみんなを守りたい!」


「・・・・・・」


「私が一緒に行けば、何も出来ない私は守られる存在になっちゃうこともわかるけど・・・!」


「・・・・・・」


「でも・・・私も守りたい・・・みんなを守りたいの・・・!」




彼女の想いが声にも表情にも表れる。

自分が不利な存在であることも彼女はきちんと理解している・・・

しかし、戦場は甘くない。

もちろん敵も・・・弱いものから狙う。




「君は・・・傷つくことが怖いですか?」


「え?」


「戦場に赴けば怪我をするでしょう、もしかしたら命を失うかもしれない」


「・・・・・・」


「怖いと思いませんか?」


「・・・怖くない、なんて言えば嘘になっちゃう・・・けど・・・ただ待ってるだけなんて嫌!!」




さんは本当に強い人なのかもしれませんね。

怖いことを怖くないと言うことも強さ。

だけど・・・怖いことを素直に怖いと言えるのもまた強さ。




「・・・わかりました」


「・・・?」


「僕からも九郎に話してみますよ」


「本当ですか?!」


「えぇ、君の誠意は十分伝わってきましたから」


「・・・弁慶」


「でも、最終判断を下すのは九郎ですからね」


「はい、ありがとう」




九郎を納得させる言葉を考えなければいけませんね。

彼もさんを思っての行動をしているだけですから・・・

だから、難しいかもしれない。

でも・・・彼女の言葉を聞いてしまったらもう、後戻りもできない。

傷つけることを嫌うのならば自らで守ればいいのですから・・・






















◇◇◇



















「姫君も戦場に連れて行く気なんだ?」


「ヒノエ・・・」


「気に入ってるんだね、アンタも」


「えぇ・・・久し振りに手に入れたいと思ってしまいましたよ」


「・・・アンタに好かれるなんてあの姫君も大変だ」


「君も気に入っているのでしょう?」


「当然、あんな姫君滅多にいないよ」


「しかし・・・九郎がどう言うかですね」


「九郎が言ったこともあの姫君を傷つけないための策だからね」


「えぇ・・・でも、さんの意志も尊重してあげたいですね」


は強い女だよ」


「・・・本当に」


「多分、自ら平気で敵陣にまで行ってしまうような恐ろしい女・・・」


「ふふ、それは困りますね」


「景時の部屋に走って行ったみたいだしね」


「景時の部屋にですか?」


「どこに行くのか声を掛けた時にそう言われたからね」


「景時に一体何の用でしょうね・・・」


「さぁ?大方、武器でも作ってもらう気なんじゃない?」


「景時にですか?」


「あぁ、この間景時のあの銃がいいなって言っていたからね」


「本当に怖い人ですね・・・」










† 勇気とは、ただ力が強いだけのことではない †

(だけどそんな君だからこそ、僕は協力したくなるんですよ。)



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