† 世界は、なんて理不尽で勝手なんだろう †










「お帰りなさい、重衡」


・・・」


「お帰りなさい」


「・・・・・・はい、ただいま戻りました」


「ん、よろしい」




その言葉とほぼ同時に私の身体に伸びるの腕。

それは、まるで私の罪を包み込む様で・・・




「大丈夫、大丈夫だよ」


「姫君・・・?」


「大丈夫、私はちゃんとわかってるから」


「・・・・・・」


「もう、泣いてもいいんだよ」


「・・・・・・」


「大丈夫、私が一緒に泣いてあげる・・・」




止め処なく流れる涙。

あなたに許されたい。

あなたに嫌われたくはない。

全ての想いが涙となり流れゆく・・・




「重衡、大好きだよ」


「・・・・・・?」


「大好き、大好き」


「・・・・・・」


「私は、あなたを嫌いになったりしない。全部全部大好き、大好きだよ」


「・・・はい、我が姫君・・・」




あなたは知っているのでしょうか・・・

私の犯した大罪を・・・

南都へ及ぼした被害を・・・




「姫君、あなたは・・・」


「ん?」


「私が起こした大罪をご存知なのでしょうか・・・?」


「・・・うん、知ってるよ」


「・・・・・・」


「でもね、仕方なかったんだと思うよ。あなた一人のせいじゃない」


「しかし・・・」


「確かに平家を率いていたのは重衡だよ。でもね、これは全ては自然が起こした天災・・・」


「・・・・・・」


「この言葉は私が重衡を愛してるから言っている言葉かもしれない」


「・・・・・・」


「でもね、忘れないでね。このあなたが起こした罪がある限り・・・あなたは苦しむことになる」


「・・・はい」


「それでも、自分を失っちゃダメだよ」


「・・・・・・」


「あなたが罪だと、大罪だと思うのなら・・・少しずつ償っていこう?」


「・・・・・・姫君・・・」


「あなたの罪は私も一緒に背負ってあげる。重衡のこと愛してるから、ね?」


・・・私の姫君・・・」


「一緒に、少しずつ償っていこう?あなたを私が支えるから」


「はい・・・」


「大丈夫、大丈夫だよ」




あなたがいる限り・・・

私は、生きていられる。

あなたが私の、光・・・

生きる意味。

存在の理由。




・・・ずっと私の傍にいてくださいますか?」


「もちろん、簡単に離してあげないよ」


「ありがとうございます・・・・我が姫君」




















◇◇◇





















「重衡」


「はい」


「一番言いたいこと言うの忘れてた」


「なんでしょう?」


「帰ってきてくれてありがとう」


「・・・・・・はい」




彼は私の元に帰ってきてくれた。

だから、ありがとう。

帰ってきてくれてありがとう。

本当に、ありがとう。




「どうしても・・・」


「え?」


「どうしてもあなたを諦めることができませんでした」


「・・・うん」


「諦めることができず、帰ってきてしまいました・・・我が姫君の元に」


「うん、帰って来てくれたね」


「私の罪をお許しください」


「罪だなんて思わないよ」




罪だなんて、思わない。

罪だなんて、思えない。

罪だなんて、思いたくない。




「私はあなた戻ってきてくれて嬉しい」




本当よ。

本当にすごく嬉しいのよ。

もしかしたらもう、帰ってこないかと思っていた。

約束はしたけど。

彼の罪は大罪。

その罪を持ってしてだとしても、彼は戻ってきた。

私の元に。




「だから・・・戻ってきてくれてありがとう」




















◇◇◇
























「んー?」


「重衡、帰ってきたのか?」


「うん、帰ってきたよ」


「そっか・・・・・・」


「大丈夫だよ、重衡は」


「・・・・・・」


「重衡は強いから、大丈夫」




例え、呪詛をその身にかけられてしまっても。

記憶を失ってしまっても・・・

私のことを忘れてしまっても・・・




「大丈夫だよ、将臣。私が保証する」


「・・・・・・そっか。そうだな」


「さ、これからのこと考えよう?」




平家のこれからの未来は決して明るいものではない。

都落ち。

過酷な源平合戦。

壇ノ浦。

平家一門の入水。

変えられるものなんて少ないかもしれない。

それでも、私は・・・







「あ、何?」


「一人で抱え込んだりするなよ」


「・・・・・・将臣」


「俺が・・・・・・俺たちがいるんだってこと忘れるなよ」


「・・・わかってる、わかってるよ。ありがとね」




私も強くならなきゃ。

みんなを守れるように。




「じゃあ、私行くね、将臣」


「どこに行くんだ?」


「知盛のところ、剣の稽古つけてもらいに」


「俺も行く」


「ん、じゃー行こっか」










† 世界は、なんて理不尽で勝手なんだろう †

(大切な人を守れるように強くならなくちゃいけない。)



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送