† 死はどう足掻いても逃れられない †
「・・・う・・・ぅ・・・っ」
「泣くな」
「泣いて・・・ないもん」
「・・・・・・」
知盛の死なないですむ運命なんてあるのかな。
なんて考えてたら、涙腺が緩む。
「泣くな」
「泣いて・・・」
泣いてない、なんて言えなかった。
頬を涙の雫が伝ったから。
私、泣いてたんだ。
「・・・泣くな」
「・・・な、?!知盛?」
知盛の顔が近づいたと思えば、頬に触れるあたたかい手と・・・
涙を拭う優しい唇。
「泣くな」
「知盛・・・」
私は、この人の運命を変えることが出来るのかな?
私が見てきた運命では、福原で和議を結ばない限り彼が進む道には死がある。
和議は、結べない。
私は・・・白龍の神子様じゃないから。
でも・・・死なせたくない・・・死なせたくないよ・・・!!!
「」
「・・・・・・な、に?」
「泣くな」
「・・・もう、泣いて・・・ない、よ」
「そう、か・・・」
「知盛?」
「・・・・・・」
「・・・・・・わっ!?」
突然抱きしめられる身体。
あなたの鼓動が伝わる。
生きてる。
「・・・知盛?」
「しばらくは、黙っていろ」
「・・・・・・うん」
そうだよね。
まだ生きてるんだよね。
まだ悲観的にならなくてもいいよね。
私だって、運命を変えていくんだから。
彼等と、共に・・・
◇◇◇
「なーにやてるんだ?お前等」
「ん?将臣?」
「クッ・・・邪魔をするなよな、兄上」
「・・・邪魔もしたくなるだろ。なぁ?重衡」
「はい」
「重衡も。知盛ー離して?」
「・・・・・・嫌だ。と言ったらどうする?」
「うわぁ・・・将臣ー重衡ーどうにかしてー」
「はい、姫君」
「了解」
「兄上、も困っておりますよ」
「・・・・・・」
「そーだぜ、離してやれよ」
「クッ・・・またの逢瀬を楽しみにしてるぜ」
「うん、私も楽しみにしてるね」
「気は紛れたようだな・・・」
「え?あー・・・うん、ありがと」
大丈夫。
私、一人じゃない。
一人じゃないから・・・
絶対に、死なせたりしない。
生きて、幸せになるんだもん。
† 死はどう足掻いても逃れられない †
(だから私に運命を変えさせてください。)
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