† 愛が試される瞬間 †










「うきゃぁ?!」




襖が開いたと思えば・・・

・・・なんか非常にまずい状態。

三人の女の人。

・・・とお付の女房さん。

っていうか、乙女の部屋に勝手に入ってこないで下さい!!




「あなたね」


「はい?」




・・・何がですか?

用件をちゃんと言って下さいよ!!!




「普通の女じゃない」


「えぇ、本当に・・・姫様のほうがお美しいですわ」




あのー・・・口々に悪口モドキを言うのはやめて下さい。

っていうか、用件!用件!




「重衡様がこのような下賎の者と・・・」


「姫様、お気を確かに・・・!!」




・・・・・・理由判明。

うん、そういうことね。

わかった、わかった。

あー・・・うん、仕方ないことだよね。




「どのようにして重盛様を誑かしたのです?!」


「えー・・・欲しいって言っただけ」




そうだよね。

欲しいって言っただけだよね。

っていうか重盛じゃなくて将臣だし、私が欲しいって言ったの。




「では、重衡様は?!」


「欲しいって言っただけ」


「知盛様もですの?!」


「うん、そう。欲しいって言っただけだね」




だって欲しかったんだもん。

仕方ないじゃない。

この人達がどれだけ彼等のことを愛してきたかは知らないけど・・・

私だって愛してるんだから。




「どうして、あなたのような下賎の者と・・・!!!」


「下賎下賎、煩い。失礼だよ。あの三人に対しても」




三人とも私のこと大好きだし。

って自惚れかも知れないけど。

それでも、少なくとも・・・この女の人たちよりは好きなはず。

だから三人にも失礼。




「「「・・・・・・」」」



「で、私に何の用ですか?」


「わたくしたち、あなたに言いたいことがありますの」


「何?手短にしてよね」


「知盛様に・・・」


「重衡様に・・・」


「重盛様に・・・」




あー・・・なんかわかった。

ようは・・・




「近づくなって?」



「「「・・・・・・」」」




あははっ!!

先に言ってしまえば唖然とした女の人たちの顔。

多分、この人たち相当な身分をお持ちだし・・・

こんな風な態度をしてくる女なんて滅多にいないのかな?




「それなら答えはNO。嫌だよ、絶対」




将臣も、知盛も、重衡も・・・

私にとって出逢えたことが奇跡な人たち。

折角手に入れたんだもん。

絶対に手離す気なんてないんだから!!!




「ふふ、しかし・・・あの方たちがそうとは言いませんわ」


「はぁ?」


「お父様が言っていましたの、平家は・・・わたくしたちの家の融資を必要とする・・・と」


「あー・・・そういうこと」




確かに平家はもう落ち目だしなぁ・・・

そろそろ事態は都落ち。

平家の都落ちは変えられない運命。




「じゃあ、もし平家が都落ちすればあなたたちはどうするの?」


「平家は落ちやしませんわ」


「そうですわ、わたくしたちがついているのですもの」


「残念。それは無理だね」




もしかしたら彼等がこの女たちに言い寄れば・・・

平家の都落ちは防げるのかな?

でも・・・もう、今の平家は怨霊ばかり。

落ちるしかない・・・と思う。

わからない。

これは、私の勝手な願いなのかもしれないけど・・・




「平家は落ちるよ」


「不吉なことを仰るのね」


「だって本当のことだもん。平家は落ちる」


「では、あなたはどうするおつもり?」


「当然、一緒に落ちるに決まってるでしょう?」




愛してる人が落ちるというのに、自分だけ・・・

なんてそんな軽い気持ち持ってない。

私は愛する人と離れるなんて嫌。

ずっと、一緒にいたいんだもん。




「「「・・・・・・」」」



「一緒に落ちる覚悟がないなら・・・私はあなたたちを認めない」


「クッ・・・不吉なことを言うな・・・」


「知盛」


「と、知盛様!?」


「本当に・・・不思議な姫君ですね」


「重衡」


「重衡様・・・!!」


「ったく・・・仕方ねぇーな」


「将臣」


「重盛様・・・」





「ん?何?」


「そんな顔すんなよなー」


「だって・・・」


「わかっていますよ、




この人たちは平家。

私は平家の滅びを知ってる。

もちろん、将臣も・・・

本当はこんな所で言いたくなかった。

平家が都落ちするなんて・・・




「とりあえず・・・お帰りいただきましょうか」



「「「・・・・・・」」」



「失礼致します」


「突然、申し訳ありませんでしたわね」


「御機嫌よう」




















◇◇◇





















「大好き」



「「「・・・・・・」」」



「大好きだよ、三人とも・・・大好き」


「クッ・・・わかっているさ」


「えぇ、わかっておりますよ」


「わかってるって、そんなこと」










† 愛が試される瞬間 †

(落ちるならどこまでも、一緒に行くから。)



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