† 冷めた恋に興味はない †










「もうこの邸に来るつもりはない」




久し振りに訪れた邸。

昔の逢瀬の場。

が現れて、足を運ぶこともなくなったこの邸から突然届いた文。

足を運ばなくなった理由を聞かせろというもの。

面倒だな・・・




「どういうことですの?知盛様」


「そのままの意味だが・・・」


「何故ですの?」


「別に・・・ただ愛しい女を見つけただけ・・・さ」




愛とかそういうものは信じていなかった。

だが、見つけた。

初めて自分が愛しいと思える存在。




「何処の姫なのです?!わたくしよりも素晴らしい方なのですか?!」


「あぁ・・・お前よりも楽しめる」


「・・・・・・」


「表情豊かな面倒な女だが・・・な」




言動ひとつひとつを楽しませてくれる存在。

面倒な人間は嫌いな俺が求めたのは・・・

この目の前にいる女よりももっと面倒な女・・・




「面倒な女はお嫌いなくせに・・・」


「そうだな・・・」


「どうせ、また戻っていらっしゃるのでしょう?」


「・・・・・・それはない、な」


「何故言い切れるのかお聞きしたいものですね」


「さぁ・・・な、理由などないさ」




この女の所に戻る気はない。

戻る気もおきない。

あの女から、から離れたいとも思わない。

重衡の言葉を借りるのならば・・・




「ただ、心を奪われたまでだ・・・」




あの瞳に囚われた。

の全てが愛しい。

を欲する心。




「可笑しな知盛様」


「可笑しい・・・だと?」


「ひとりの女性にそれほどまでに執着するなんて・・・」


「執着か・・・悪くない」




色も恋も手に入れるのは簡単。

だが、あの女だけは簡単には手に入らない。

手に入れるために立ちはだかる壁は険しいから・・・な。




「何処の姫なんです?」


「さぁ・・・それさえも知らんな」


「中納言のご身分のこともお考え下さいませ」


「身分?そんなもの・・・気に留めるつもりもない」




参内しても・・・詰まらん。

参内などするよりもと語らい剣を交える方が有意義だ・・・




「用は済んだ」


「お待ち下さい!知盛様!!」


「お前にもう用はない」


「知盛様!!」


「知盛ー?いるー?」


「・・・・・・?」


「あっ知盛発見。ホントにいたー」


「何故、ここにいる?」


「ん?女房さんに知盛は何処って?聞いたらこのお邸のこと教えてもらったの」




クッ・・・重盛兄上の言葉を借りれば・・・

いいタイミングとでも言うのか・・・?










† 冷めた恋に興味はない †

(本当に・・・可笑しな女だな。)



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