† これで皆を守れる †
「・・・・・・」
「・・・・・・」
用意された剣を目の前に置き、持とうともしない。
ただ、ただ、見つめるだけ。
「・・・・・・やる気がないのなら止めることだな」
「・・・・・・」
剣を持たなければ到底扱うことなど不可能。
それくらい、この女にもわかっているはずだ・・・
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「お前は女であろう?」
「・・・ん」
「別に女が剣を持つ必要もないさ・・・」
「・・・・・・嫌」
「・・・何故だ?」
「・・・・・・」
「・・・死ぬぞ」
「・・・・・・嫌、死にたくない」
・・・本当に、意味のわからん女だな・・・
剣なんて持たなければいい。
有川であれ、重衡であれ・・・この女を守る者はいる。
だから、剣を握ることを否だと思うのならば・・・
止めればいい。
「剣を握ることは怖いと思う」
「・・・・・・」
「それでも、私は剣を持たなくちゃいけない」
「・・・何故だ・・・?」
「愛する人が、愛する人たちが・・・剣を握り、戦場に赴くのに・・・私は待ってるだけなんて嫌」
「・・・・・・」
「待ってるだけなんて嫌だよ。一緒に戦場に行きたい」
「・・・・・・」
「でも、そのためには剣を使えなくちゃいけない。足手纏いになるわけにはいかない」
クッ・・・獣のような瞳をしてくれる。
理由など、知っている。
この間も言っていたから・・・な。
しかし、いい瞳をするな・・・
「足手纏いにならないためにも、剣を使えるようにならなくちゃいけない」
「・・・馬鹿な女・・・だな」
「そうだね、馬鹿な女だって自分でも思うよ」
「だが・・・止める気はないのだろう?」
「うん」
「ならば・・・付き合ってやるさ」
たまには悪くない。
弱い女を相手にするもの。
最も・・・この女は決して弱くはないがな。
「ありがと、知盛」
「・・・・・・」
「ちょっと眠ってもいい?」
「あぁ・・・」
「ん、じゃあ・・・ちょっとだけ、肩貸してね」
聞こえてくる寝息。
それほどまでに気を張っていたのか・・・
「クッ・・・無防備なものだ・・・な」
素性も、正体も全てが謎な女。
だが、悪くない。
悪くない・・・な。
† これで皆を守れる †
(俺を楽しませてくれよな・・・。)
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