† 夜なんか待たずとも、私があなたに会いに行くよ †










「しーげーひーら」


「本当に舞い降りてくださったのですね、可愛らしい姫君」




御簾の外で空を見上げている私を呼ぶ可愛らしい声音。

その声音の持ち主は先ほど現れた姫君で・・・




「うん、まだ名前名乗ってなかったでしょ?」


「名を名乗りあうのは夜半になってから・・・とあなたが申しましたからね」


「そう・・・だから名乗りに来たの」


「では、姫君。私に名前をお教えいただけますか?」


だよ、


・・・美しい名前ですね」


「ありがとう」




微笑まれる姿も・・・全てが愛しい。

可愛らしい方ですね。




「姫君、お手をどうぞ」


「え?」


「今宵は星が美しく瞬いております」


「星?」


「はい」


「あっホントだ」


「ですので・・・少し外に出てみませんか?」


「うん!出てみたい」


「では、お手を・・・」


「はぁーい」


は星はお好きですか?」


「星?好き。月も好き」


「それは良かった。この庭は特に空が美しく見えるのですよ」


「そうなの?うわぁーじゃあ日参しなくちゃ」


「毎日逢いに来て下さるのですか?」


「空に?それとも重衡に?」




一瞬、不敵な微笑を見せる姫君。

その姿がまた、お可愛らしくて・・・

やはり、私が一目で心奪われた姫君ですね・・・




「できることなら・・・私に逢いに来て頂きたいものですね」


「逢いに来るよ、もちろん。って言うか・・・私、このお邸にいるつもりだもん、毎日逢えるよ?」


「嬉しいものですね・・・可愛らしい姫君と毎日逢瀬を楽しめるのは・・・」


「楽しい毎日にしてあげるよ」


「ふふ、それは楽しみですね」


「あのね、私・・・重衡のことも大好きだよ」


「大好き、ですか・・・」


「そう、大好きなの」


「それは・・・とても嬉しい言葉ですね」




姫君から紡がれる、愛の言葉。

それは何よりも甘美なものですね。




「私も・・・愛しております、・・・」


「ホント?」


「はい」


「私、突然現れたいかにも怪しい女なのに?」


「私の心はあなたに奪われてしまいましたから・・・」


「・・・・・・」


、あなたを見る度に愛しさが募るのです」


「重衡・・・」


「この想いは迷惑なものでしょうか・・・?」


「迷惑じゃない!すごく、嬉しいよ」




微笑む姿にまた愛しさが募る・・・










† 夜なんか待たずとも、私があなたに会いに行くよ †

(あぁ、可愛らしく、愛しい姫君。)



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