† そう簡単に諦められるんなら、私は貴方を好きになってないよ †










「・・・お。ちゃん寝ちまったか」


「すみません、トムさん」


「ん?なんで謝るんだ?」


「いや、コイツ昔から落ち着きはないわ、絡むわで大変な奴ですから・・・」


「ははっまぁ、俺は楽しかったから気にするな」




被害を被ってたのは静雄だしなぁー。

ちゃんは酔った勢いからか静雄に絡む絡む。

無意識というか、本能的というか・・・

今も静雄にもたれて寝てるしな。

とりあえず、高校時代もこんな感じで静雄にべったりだったんだろうなぁ・・・




「そう言ってもらえると助かります」


「静雄が押されてる姿見るのも新鮮だったしな」


「・・・昔からには弱いんです。こういうのを惚れた弱みって言うんすかね」


「ははっそうかもな」




しかし・・・

こうやって見れば見るほどにお似合いの二人だよな。

お互いに想い合ってて、好き合っていて・・・

そう、相思相愛。




「なぁ、静雄」


「なんすか?」


ちゃんともう一度付き合ったりしたいとは思わないのか?」


「・・・怖いんすよ。また、のこと壊してしちまうんじゃないかって」


「・・・・・・」


「コイツ、俺と付き合ってるとき、本当に怪我が絶えなくて・・・挙句の果てにナイフ刺さったんですよ」


「・・・悪ぃ、静雄。俺には全く話が見えない」


「すみません。簡潔に言うと俺と・・・臨也の野郎の喧嘩に巻き込まれてしょっちゅう怪我してたんすよ」


「なるほどな。だから、ちゃんは簡単に止めるなんて言い出したんだな」




それは、池袋に住んでいて、

静雄と折原臨也の戦争とも呼べる喧嘩を知っている人間にとってはありえない。

自分から喧嘩を止めるような行為をするものは・・・まずいないだろう。

ちゃんを除いて。




「・・・そんなこと言ってたんすか」


「あぁ、俺もちゃんが普通に、道を歩くようにお前らの間に入っていくから驚いたぞ」


「高校時代はそんな行動がしょっちゅうだったんで・・・その度には怪我してでもまた同じことを繰り返してって感じで」


「だから、別れたのか?」


「はい。臆病者なんすよね、俺。が壊れていっちまうような気がしてそれが怖くて別れたんです」


ちゃんには言わなかったのか?怪我するようなことするなって」


「言いましたよ。それこそ、俺も周りの奴らも」


「でも、ちゃんはやめなかったのか」


「はい。・・・挙句の果てに俺のことが好きだから怪我するのも平気とか言われちまって・・・」




・・・なるほどな。

そりゃ、静雄じゃなくても別れる道を選ぶかもしれない。

いくら自分のことを好きと言ってくれていても、怪我をすることも厭わないとなると・・・な。

ちゃんは・・・よっぽど静雄のことが好きだったんだろうな。




「だから、俺は怖いんです。また、に怪我させちまうんじゃないかって」


「・・・そうだよな・・・ちゃんは俺から見て平気そうにお前らの間に入って行ったからな」




恐らく、ちゃんは高校時代と同じ感覚だったんだろう。

静雄のことが好きだから怪我をすることも厭わない。

静雄が喧嘩嫌いだってことを知った上で起こす行動、なんだろうな。




「変わってないんっすよね、高校時代から全く」


「変えてやれよ、お前が」


「え?」


「高校時代とは色々違うんだ。静雄も・・・恐らくちゃんも」


「・・・・・・」


「好きなんだろ?ちゃんのこと」


「・・・はい」


「だったら、変えてやれよ。ちゃんが壊れないように」


「・・・努力します」


「よし、じゃーそろそろ行くか」


「あ、はい」


ちゃんはどうするんだ?」


「とりあえず、担いでつれて帰ります」


「ははっそうしてやれ。気持ちよさそうに寝てるしな」


「はい」




返事とともに、静雄はちゃんを抱き上げた。

まるで、人形を抱き上げるように・・・

なんていうか、面白い状態だよな。




「人間をそんな風に抱き上げる奴なんてあんまいねぇーよな」


「コイツ軽いんで楽勝っす。高校のときも授業間にあわなそうな時とかこうやってのこと運んでたんで」


「目立ってただろ」


「・・・まぁ、それなりに。あ、トムさん」


「なんだ?」


の分も俺が払いますんで」


「いいって。はじめから奢ってやるって言ってただろ」


「・・・・・・すみません。ありがとうございます」


「気にするな。面白いもの見れたしな」


「今度、にもちゃんとお礼言わせますんで」


「ははっちゃん覚えてるか?」


「忘れてたら一発殴って思い出させますから」


「いや、むしろもっと記憶が飛ぶだろ」




静雄の一発殴るは一発どころの威力じゃねぇ。

それこそ・・・生死を彷徨うって言っても過言じゃねぇ。

まぁ・・・さっきのデコピン同様、多少は手加減ってもうもできるんだろうが・・・




「そういやお前、ちゃんには手加減できるんだな」


「あぁ、なんかできるんですよね・・・不思議と」


「愛の力か?」


「どーなんすかね?」


「まぁいいんじゃないか?手加減できることにこしたことはねぇだろ」


「はい」


「しかし・・・よく寝てるなぁーちゃん」






















◇◇◇






















「・・・どうするんだ?俺」




家までを担いできたのはいい。

問題はこれからだ。

鍵は恐らく鞄にでも入ってんだろ。

だが、コイツをこのまま一人にしていいものか・・・




「あぁ・・・めんどくせぇ・・・」




昨日の今日だ。

俺の家に泊めてやるのが一番手っ取り早い。

コイツをベッドに寝かせて俺がソファーで寝れば全く何も問題はない。




「・・・靴はさすがに脱がせなきゃなんねぇよな」




・・・女物の靴ってわかんねぇ・・・

このボタンを外せば脱がせられるか?

・・・なんて思いボタンを引っ張れば、ボタンが外れた音じゃあない、もっと無残な音が響く。




「・・・金具ごと外れやがった」




・・・悪ぃ。

新しい靴買ってやるから許してくれ・・・なんて心の中で謝る。




「片方がダメになった以上、もう片方だけ正常ってのも意味ないよな」




そう自分に言い聞かせ、勢いよくもう片方の靴のボタンを金具ごと引きちぎった。










† そう簡単に諦められるんなら、私は貴方を好きになってないよ †

(しかし・・・やっぱ、ちっせぇな靴も)



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