† もう、二度と逃げ出さない強さを †










さん」


「あ、正臣くん」


「俺はあの人の捨て駒かもしれない。でも、」


「行くんだ?」




見透かしたようにさんは言った。

きっと、この人は何もかもわかってる。

それこそ・・・あの折原臨也よりも。




「はい、本当はわかってた・・・ただ、逃げてただけですから」


「うん、いい顔してる」


「沙樹は俺の行動に怒るかもしれない、遅すぎるって言うかもしれない」


「でも、それでも好きなんだよね?沙樹ちゃんのこと」


「・・・はい」


「じゃあ、行ってらっしゃい。君には帰るべき場所がちゃんとあるんだから」




そう言って、さんは笑った。

いつもどおりの笑顔で。




「やっぱりさんって臨也さんとは違いますね」


「そう?」


「たまにすごく臨也さんに近いって感じもしますけど」


「それよく言われるなぁー」




本当は無視して通り過ぎようと思ってた。

でも、気づいたら俺は・・・声をかけていた。

もしかしたら、この人に・・・この人の言葉が欲しかったのかもしれない。

臨也さんとは違う、この人に。




「・・・過去は、」


「ん?」


「過去は淋しがり屋なんですよね?」


「そうだよ。過去は忘れられると置いてきぼりくらっちゃうから、だから淋しがり屋」


「俺はけじめをつけて、過去に追いついて過去を迎えにいこうと思います」


「うん、じゃあそんな今だからこそ・・・コレをあげちゃう」


「なんですか?コレ」


「フィオーレのサイトアクセスのためのキーワード」




さんに手渡されたのは一枚の紙。

あぁ、そうか・・・

この人がフィオーレのトップ。




「必要だったら使って?」


「ありがとうございます」


「じゃあ、頑張って行ってらっしゃい」


「はい!」


「あぁ、あと・・・次私の携帯に電話するときはちゃんと喋ってね?」


「・・・え?」




俺がさんの携帯に電話したのは・・・

あの時、一度だけ。




「・・・なんで俺からの電話だってわかったんですか?」


「んー愛の力?」


「へ?」


「沙樹ちゃんがね、教えてくれたんだよねー。何かあった時のためにって」




・・・やっぱり、

沙樹が俺の帰るべき場所、なんだ。

だから、俺は・・・過去を迎えに行く。




















◇◇◇




















「じゃあ、先に沙樹ちゃんのとこに行きますか」




さて、臨也・・・

臨也はどこまで私の行動を読んでるの、かな?




















◇◇◇




















「沙樹ちゃん」


「あ、さん」


「お見舞いに来たよー」


さんは今起こってること、知ってるんですよね?」




さんはフィオーレのトップ。

フィオーレはさんたちが作ったんだって、さんが教えてくれた。

サイトにアクセスするためにキーワードと一緒に。

フィオーレのサイトには今の池袋で起こってる状況がこと細かく書かれている。

・・・多少の時間差はあるけど。




「うん、知ってるよ。私は何もしない傍観者だけど」


「・・・・・・」


「そうそう、知ってる?サイモンのところの露西亜寿司って結構景気がよくて・・・電話帳にも載ってるんだって」




さんは基本的に優しい人。

傍観者って言ってるくせにこんなことを私に言うし・・・

私に、フィオーレのサイトを教えた。




「ちなみに、フィオーレに私が載せなかった最新情報を教えてあげる」


「え?」


「正臣くんは戦うことを選んだよ」


さんは正臣は本当に馬鹿だと思いませんか?」


「馬鹿じゃないよ、彼は」


「・・・・・・」


「正臣くんはちゃんとわかってる」


さんって優しいですよね」


「私は優しくなんてないんだよ。これは一種の偽善的行為」


「偽善でも・・・私に選ぶ道を教えてくれました」


「わかんないよ?コレも臨也の計画通りかもしれなし。私も臨也の駒の一つかもしれない」




さんが臨也さんの駒のはずがない。

だって、さんは臨也さんに愛されてるから。

臨也さんは怖い人。

だけど、さんを見る臨也さんは怖くない。

ただ、愛しさばかりがさんに向けられているから・・・




「でも、さんは意地悪ですよね」


「え?」


「私にここまで教えてくれて、でも・・・電話帳をここに持っては来てくれない」


「だって正臣くんは自分の愛で戦うことを選んだ。だったら沙樹ちゃんも自分の足で進まなきゃ」


「・・・やっぱり、わかってたんですね。私が本当は一人で歩けることを」


「そりゃね」


「臨也さんは私が私の心のままに行動したら怒るかな」


「臨也は怒らないよ」


「ですよね」




私は駒。

臨也さんの駒にすぎない。

正臣を臨也さんの駒にするための駒。




「あ、さん。ずっと言いたかったことがあるんです」


「ん?」


「ごめんなさい」


「え?」


「2年前のあの時、私に”行かないほうがいい”って教えてくれたのに・・・私は、」


「沙樹ちゃんは選んだ、その道を」


「・・・・・・」


「だから、私に謝ることなんてないんだよ?」


「でも、」


「むしろ、私は・・・どんなことをしてでも沙樹ちゃんを止めなきゃいけなかったのに止められなかった」


「それは・・・!!さんは悪くないんです・・・!!」




私が、勝手にしたから。

臨也さんの言葉で、って言うのもあったけど・・・

私は、自分がどうなるか、わかってたのに・・・

あの時、釘をさすようにさんも教えてくれたのに・・・私は選んでしまった。

人を傷つけてしまう道を。

正臣を傷つけてしまう道を。




「じゃあ、おあいこね?」


「え?」


「お互い謝らない、これでイーブンでしょう?」


さん・・・」


「さーってと、じゃあ私はおとなしく傍観者になってるから・・・頑張れ」










† もう、二度と逃げ出さない強さを †

(ありがとうって笑って言いたい。いつか・・・)



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